精選版 日本国語大辞典 「宛て文」の意味・読み・例文・類語
あて‐ぶみ【宛文・充文】
- 〘 名詞 〙
- ① 物資、土地などを官から給与する場合の通達書。
- ② 官職などに補任する辞令。
- [初出の実例]「去夕使部持二来仁王会行事僧供充文一」(出典:権記‐長保四年(1002)一〇月六日)
- ③ 荘園領主が、作人の申請に対し、特定土地の用益を割りあてる文書。⇔請け文。
- [初出の実例]「将仰二正理之貴一、令レ弁二官物未進一、兼任二充文旨一、令二耕作番殖一矣」(出典:東寺百合文書‐せ・応徳二年(1085)五月一四日・東寺領伊勢国川合大国荘司解)
- ④ 費用を割り当てる文書。割当高を記した文書。配符。
- [初出の実例]「知行八ケ国宛文并返抄等、載二別目録一注二進之一」(出典:吾妻鏡‐建久元年(1190)六月二六日)
- ⑤ 中世、所領をあてがう文書。あておこないじょう。あてがいじょう。
- [初出の実例]「右件畠者、以二勝慶阿闍梨宛文一行善知行之処、前妻丹生守又取二勝慶之宛文一、可レ令二領掌一之由」(出典:高野山文書‐寛元三年(1245)六月二八日・高野嶺荒川庄畠地充文)
- ⑥ 敬意を表するために、書状を受け取るべき人に直接宛てないでその下位の人に宛て、目的の人にその内容が伝わるようにした書状。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑦ 論義の課題となった経疏の文章。
- [初出の実例]「保延二年始行〈略〉以二大乗義章一為二宛文一分二二百余科一」(出典:東大寺続要録(1281‐1300頃))