富松郷(読み)とまつごう

日本歴史地名大系 「富松郷」の解説

富松郷
とまつごう

江戸時代の東富松村・西富松村付近に所在したとみられる奈良春日社兼興福寺領の郷。室町期には東富松郷ともよばれており、また富松庄とよばれることもあった。はま郷・なか郷とともに九条家領生嶋いくしま庄に所在した郷の一つ。文永四年(一二六七)に郷内の公田七町一一一歩が「故准后御菩提」のために善峰観念三昧寺供田として寄進されており(同年二月八日「散位某奉書」京都大学総合博物館蔵三鈷寺文書)、当郷の一部は三鈷さんご(現京都市西京区)領となっている。文明一〇年(一四七八)一〇月日の三鈷寺領当知行目録(東京大学法学部法制史資料室蔵三鈷寺文書)にも「生嶋庄内富松郷公田漆町余」とみえ、同寺の領有が存続していた。

「三箇院家抄」によれば月輪関白九条兼実によって興福寺に寄進され、同寺大乗院が管領する所領であった。当郷の年貢浜郷と同じく、四季八講の夏冬二季分に充てられている。興福寺子院松林院の知行で、面積は一四町八〇歩、二町二反をたちばな御園押領されており、このほか損田二町九反半、公文給八反、田所給五反、惣追捕使給五反、職事給一反、恩損借屋免一町三反小と地頭分六反小などが差引かれ、大乗院には分米二四石七斗が上納されて、このうち八石六斗は安位寺御料所とされている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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