最新 地学事典 「寒冷期植物化石」の解説
かんれいきしょくぶつかせき
寒冷期植物化石
cold-climate flora
中・高緯度地域の更新世の氷期または寒期に堆積した地層から産出する植物化石群には,地理的分布上特徴のある種を多数含む。化石産地付近に生育する植物よりも,より北方か,より高地に分布し,より寒冷な気候条件のもとに生育する植物の化石が産する。このような化石は寒冷な気候条件を指示し,寒冷期の植物化石と称される。日本の本州の低地から産する寒冷期の植物化石群としては,大阪層群上部(Larix層)産の満池谷植物群,多摩ローム層産や郡山層上部産の植物群,江古田針葉樹層産や大槻層産の植物群などが代表的。最初の植物群は更新世前期の,中間のものは同中期の,最後のものは同後期のなかの氷期のもの。これらの植物群は,しばしばFagus crenata(ブナ)・Cryp-tomeria japonica(スギ)・Chamacyparis(サワラ)などの冷温帯生の樹種やMenyanthes trifoliata(ミツガシワ)などの水草種を伴うが,Larix gmelini(グイマツ)・L.leptolepis(カラマツ)・Picea jezoensis(エゾマツ)・P.bicolor(イラモミ)・P.glehni(アカエゾマツ)・Abies sachalinensis(アカトドマツ)・A.mariesii(アオモリトドマツ)・A.veitchii(シラベ)・Pinus koraiensis(チョウセンマツ)・Tsuga diversifolia(コメツガ)・Taxus cuspidata(イチイ)・Betula platyphylla(シラカンバ)・B.ermanii(ダケカンバ)などの亜寒帯林または亜高山帯林のなかの針葉樹種や広葉樹種が主な構成要素。これらは寒冷気候を指示する代表的種類。しかし,一種のみから寒冷気候を推測するのは不確実なので,植物群の組成上の特徴から推論される。北半球の日本以外の中緯度地域の寒冷期の植物群の代表的な例としては,ヨーロッパ中部地域(英国・オランダ)のRiss, Wrm氷期のDryas植物群がある。これはDryas octopetala(チョウノスケソウ)と種々のヤナギやBetula nanaなどの矮
執筆者:鈴木 敬治
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

