改訂新版 世界大百科事典 「導管病」の意味・わかりやすい解説
導管病 (どうかんびょう)
vascular disease
病原がもっぱら導管で増殖して通導障害を起こす植物の病気。増殖した病原,病原から分泌された多糖類,植物組織の分解物などが蓄積して導管が閉塞し,茎葉がしおれて枯れる。Fusarium oxysporum(不完全菌)はトマト萎凋(いちよう)病,キュウリ,スイカ,メロン,サツマイモのつる割れ病,ダイコン,キャベツ,イチゴの萎黄病など多くの植物に導管病を起こす。発病株の根や茎を切断すると導管部の褐変が容易に観察される。ナス・トマトなどの野菜や花の半身萎凋病はVerticillium(不完全菌)が根から感染し,導管を通って上部へ広がり半身あるいは半葉だけしおれることがあり,導管病の特徴をよく示している。以上の土壌伝染病に対し,欧米のニレに発生する立枯病(Dutch elm病。子囊菌Ceratocystisによる)はキクイムシが体に胞子を付着して伝搬する。細菌の寄生によって起こる導管病にはイネ白葉枯病,ジャガイモ輪腐病,トマトやナスの青枯病,キャベツやダイコンの黒腐病などがある。イネ白葉枯病では細菌が葉縁にある水孔から感染し,葉脈に沿って白く枯れた病斑が形成される。青枯れは導管の閉塞による急性の萎凋を,輪腐はイモの表面に沿って輪状に配列する導管の変性を意味する。病株の葉脈や茎を切って水に浮かべると導管から細菌が流れ出すのが見える。防除対策として,種子・土壌消毒,輪作,圃場(ほじよう)衛生,抵抗性台木への接木(キュウリ,メロン,トマトなど)が行われる。
執筆者:奥田 誠一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報