小児期・思春期・若者のうつ病(読み)しょうにきししゅんきわかもののうつびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

小児期・思春期・若者のうつ病
しょうにきししゅんきわかもののうつびょう

年少・若年者が抑うつ的になる症状。小児うつ病をはじめとして、この年代でも薬物療法の対象になる精神疾患があることが知られている。しかも、小児期思春期うつ病は、本人が自分の気持ちをうまく表現できなかったり、いらいら感やいわゆる「ひきこもり」などの行動上の問題が前面に出たりするために周囲に気づかれにくい場合がある。したがって、不登校やいわゆる「ひきこもり」、暴力、あるいは拒食過食など、思春期に問題とされる行動がうつ病の表現型である場合も多く、医学的治療が必要な場合があることを、本人や家族、学校関係者に理解してもらうことが重要である。学校医などが、学校関係者と連携しながら教育場面でストレスやメンタルヘルスについて教育・啓発活動をするように助言することが、精神疾患に悩む子どもたちに対する援助のためにも、またそれ以外の子どもたちの心の健康の向上のためにも役にたつ。

 近年新型うつ病ないしは現代型うつ病が若者の間に増えてきているということがマスコミで話題になったことがある。その典型的な病状として、会社に行けないが自宅では自由気ままに生活していて、他罰的な傾向があるとされているが、学問的裏付けがまったく不十分な概念である。精神疾患の背景はさまざまであり、このように先入観をもってみるのではなく、個々人の背景を考えながら、医療的にも社会的にも、その人をどのように手助けするのがよいのかを考えていくことが重要である。

大野 裕 2020年7月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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