日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児腎疾患」の意味・わかりやすい解説
小児腎疾患
しょうにじんしっかん
小児にみられる腎疾患で、大別すると急性および慢性の糸球体腎炎と、ネフローゼ症候群に分けられるが、もっとも多くみられるのは急性糸球体腎炎である。
急性糸球体腎炎は7歳前後の学童にもっとも多い。原因は溶連菌の感染と考えられていて、免疫のメカニズムが関係しているところから免疫複合体腎炎とよばれる。症状は、急に顔がむくむ、身体がだるい、発熱、嘔吐(おうと)などで始まり、検査により血尿、タンパク尿、高血圧などがみられる。急に高血圧がおこると、頭痛、嘔吐、意識混濁、けいれんなどがみられ、高血圧性脳症とよばれる。治療は、安静、食事療法が主であり、1~3か月で治癒するものが多い。
慢性に経過する慢性糸球体腎炎は、腎生検の組織検査によって種々の型に分けられるが、自覚症状がなく、学校検尿で偶然発見されることが多い。
ネフローゼ症候群は、高度のタンパク尿と浮腫(ふしゅ)(むくみ)、低アルブミン血症、脂質異常症が特徴であるが、小児では原因不明の特発性が大部分である。年齢は2~7歳に多く、性別では男児に多い。治療はステロイドホルモンを第一選択とする。大部分は治療に反応するが、再発を繰り返すことが多い。したがって、感染にかかりやすく、注意が必要である。
小児腎疾患としてはこれらのほか、紫斑(しはん)病性腎炎や遺伝性腎炎、良性家族性血尿などがある。
[山口規容子]
『伊藤拓・吉川徳茂編『小児腎疾患Q&A』(1999・医薬ジャーナル社)』▽『五十嵐隆著『小児腎疾患の臨床』(2006・診断と治療社)』