学校検尿(読み)がっこうけんにょう

改訂新版 世界大百科事典 「学校検尿」の意味・わかりやすい解説

学校検尿 (がっこうけんにょう)

日本の小学校中学校,高等学校では,毎年1回定期健康診断を行うことが〈学校保健法〉によって定められているが,1973年5月,この学校保健法施行令が一部改正され,その定期健康診断のなか尿検査という項目が加えられた。したがって74年以来,全国の小中高校においては,毎年4月から6月にかけて,全児童生徒を対象として検尿が行われている。この学校で行う集団検尿のことを学校検尿と呼んでいる。定期健康診断に検尿がとり入れられた理由として,小中学校の長期欠席者や体育見学者のなかに慢性腎臓病の子どもが多いことから,このような慢性腎疾患児を早く発見して,正しい治療および生活管理をすることが必要であるとする学校関係者の意見が強くなったことが,まずあげられる。また成人の慢性腎臓患者の中で,しだいに悪化し,最終的には腎不全となり人工透析を受けなければならない患者が増加し社会問題となりつつあるが,これらの患者の多くは小中学校のころに発病している。このような慢性腎臓病の患者では,自覚症状がでるのは腎不全がかなり進行してからであるので,医師を訪れることが遅く,その間生活管理も十分になされていない。したがって,このような患者を小中学校の時期に発見することは非常にたいせつなことである。日本では小学校の就学率がほぼ100%に近いので,学校検尿により日本中の子どもはすべて毎年1回検尿をうけることになるが,このような大規模な集団検尿の実施は世界にも類をみない。

 実際の検尿のやり方については細かくとりきめられているが,早朝第一尿(起床してすぐ排尿したもの)を定められた容器に入れて学校に持って来る。検査は一次検査ではタンパク尿血尿潜血反応をしらべる),尿糖について試験紙法で行われる。一次検査陽性者は二次検査をうける。二次検査は試験紙法のみでなく,尿沈渣の顕微鏡検査を併用する。一次,二次検査陽性者は,しかるべき医療機関で三次検査(精密検査)をうけ,その結果を学校に報告してもらうようになっている。学校検尿でタンパク尿,血尿,糖尿などの異常の発見される率は,小学校では一次検査でタンパク尿1%,血尿2%,尿糖0.1%,二次検査ではタンパク尿0.1%,血尿0.4%,尿糖0.02%前後である。中高校での陽性率は小学校のそれよりさらに高く,その2~4倍が発見されている。三次以降の精密検査で腎臓の病気と診断されるものは小学校0.24%,中学校0.46%程度で,そのうち腎炎と診断されたものは0.04~0.07%,つまり,まったく健康と思われていた児童・生徒のなかで腎炎と診断されるものが1万人に4~7人の割合でいるということになる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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