尚書古文疏証(読み)しょうしょこぶんそしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「尚書古文疏証」の意味・わかりやすい解説

尚書古文疏証
しょうしょこぶんそしょう

中国、清(しん)の閻若璩(えんじゃくきょ)の著。全8巻。今日の『書経』(『十三経注疏(じゅうさんぎょうちゅうそ)』に収める『尚書正義』の「経(けい)」本文)58篇(へん)は、東晋(とうしん)の元帝のとき、梅賾(ばいさく)が「孔安国古文尚書」を得たとして献上したものであるが、そのうち古い伝来をもつ33篇以外の25篇、および漢の孔安国の伝(注)と称するものの、みな偽作であることを、閻若璩はこの著で128条(うち10条は文を欠く)の証拠をあげて論証した。当時、毛奇齢(もうきれい)など反論を書く人もいたが、恵棟(けいとう)は『古文尚書考』で偽古文の作者の典拠を句ごとに示すなど、かくて朱子(朱熹(しゅき))以来、疑う人も少なくはなかったのが、精密な実証を得て今日では動かぬ議論となっている。孫の学林が眷西堂(けんせいどう)で刊刻した本(1745)があり、また『皇清経解(こうせいけいかい)続編』に収める。

[近藤光男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尚書古文疏証」の意味・わかりやすい解説

尚書古文疏証
しょうしょこぶんそしょう
Shangshu gu-wen shu-zheng

中国,経学に関する清初の学術書閻若璩撰。8巻。宋以降の学者によって疑問視されていた『古文尚書』(残存 58編の書中,秦の伏生によって漢代に伝えられた 33編の『今文尚書』に対し,その後の作為と考えられる 25編をいう)について厳密な考証を加え,それが魏晋時代の偽作であることを断定した著作。清初の康煕帝時代に完成。清代考証学の傑作とされている。

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世界大百科事典(旧版)内の尚書古文疏証の言及

【閻若璩】より

…山西省太原の人。若いころから経学・史学を好んで名声をはせていたが,20歳のとき,《古文尚書》を読んで,その編数に疑いを抱き,ついに《尚書古文疏証》8巻を著して,《古文尚書》25編と孔安国の伝が後世の偽作だと推論した。長く神聖視されてきた経書を批判的対象とした点で,清代考証学の先駆となった。…

【考証学】より

…(1)古典のテキストについて綿密な考証が行われ,その真偽が鑑別されたこと。閻若璩(えんじやくきよ)の《尚書古文疏証》は,《尚書》のうち東晋におくれて出た古文についてその偽作なることを証明したものである。これは神聖なる経典を,研究の対象とし,かつこれを懐疑したものであって,一種の思想解放としての意味をもった。…

※「尚書古文疏証」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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