中国、清(しん)初の学者。字(あざな)は百詩、号は潛邱(せんきゅう)。山西(さんせい)省太原(たいげん)県の人。江蘇(こうそ)省淮安(わいあん)府に住んだ。16歳で県学に入り、経学・史学にいそしみ、「一物も知らずんば以(もっ)て深き恥と為(な)し、人に遭(あ)いて問うに寧日(ねいじつ)有る少(な)し」を座右銘とした。20歳で『尚書(書経)』を読んでから30余年の努力を積み、古文25篇(へん)と孔安国(こうあんこく)の伝が偽作であることを論証した『尚書古文疏証(そしょう)』(1745)は、古典を初めて科学的な研究対象とする道を開き、後の清朝考証学を導くものとなった。地理学にも詳しく、徐乾学(じょけんがく)(1631―1694)の『大清一統志(だいしんいっとうし)』編纂(へんさん)に加わり、『四書釈地』の著がある。『潛邱箚記(さっき)』は平生の読書論学の集録である。晩年、康煕(こうき)帝の第4皇子に召されて知遇を受け、康煕43年6月8日、北京(ぺキン)で卒(しゅっ)した。
[近藤光男 2016年3月18日]
中国,清代初の学者。字は百詩,号は潜邱。山西省太原の人。若いころから経学・史学を好んで名声をはせていたが,20歳のとき,《古文尚書》を読んで,その編数に疑いを抱き,ついに《尚書古文疏証》8巻を著して,《古文尚書》25編と孔安国の伝が後世の偽作だと推論した。長く神聖視されてきた経書を批判的対象とした点で,清代考証学の先駆となった。ほかに《四書釈地》などがある。
執筆者:坂出 祥伸
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1636~1704
清の学者。山西省太原の人。字は百詩,号は潜邱(せんきゅう)。考証学に優れ,その著『古文尚書疏証』(こぶんしょうしょそしょう)は『古文尚書』25編を後世の偽作と断じた画期的な業績である。他にも著述が多い。
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…(1)古典のテキストについて綿密な考証が行われ,その真偽が鑑別されたこと。閻若璩(えんじやくきよ)の《尚書古文疏証》は,《尚書》のうち東晋におくれて出た古文についてその偽作なることを証明したものである。これは神聖なる経典を,研究の対象とし,かつこれを懐疑したものであって,一種の思想解放としての意味をもった。…
…現存の《書経》である。しかし宋の朱熹(子)いらい疑惑がもたれ,ついに清の閻若璩(えんじやくきよ)《古文尚書疏証》と恵棟の《古文尚書考》によって,〈大禹謨〉などの25編は魏・晋のころの偽作であることが論破された。孔安国の伝も偽作ときめつけられ,〈偽孔伝〉と呼ばれるが,《書経》につけられた数多くの注釈のなかでは第一級の価値をもつものであり,朱熹の弟子の蔡沈が作った注釈《書集伝》が新注といわれるのに対して,古注と呼ばれる。…
※「閻若璩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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