居成(読み)いなり

精選版 日本国語大辞典 「居成」の意味・読み・例文・類語

い‐なり ゐ‥【居成】

〘名〙 (「に」を伴って副詞的に用いられることが多い)
① 引き続き、もとのままでいること。
(イ) 動かないでそのままの位置にいること。
散木奇歌集(1128頃)神祇「けふみれば花もすぎふになりにけり風はいなりにふくとみれども」
(ロ) 奉公人が年季が明けても、さらにそのまま続けて働くこと。重年(ちょうねん)。⇔出替り。《季・春》
※俳諧・猿蓑(1691)五「此春も盧同が男居なりにて〈史邦〉 さし木つきたる月の朧夜〈凡兆〉」
(ハ) 近世役者は一年契約で一劇場に出演したが、次年度も引き続き同じ劇場に出演したこと。また、その役者。
※談義本・根無草(1763‐69)前「天鈿女命(あめのうずめのみこと)、其外居なり」
(ニ) 遊女が、他の廓(くるわ)へ住み替えすることなく、そのまま続いて同じ廓に勤めること。
浮世草子傾城禁短気(1711)五「三ケ津の色里に出世し、居成(ヰナリ)に勤(つとむ)るといふは遊女冥利に叶ひたりと」
住居、商店、工場などで、家具、調度、設備、商品を含めてそっくりそのままの状態。また、そのような家屋。売買貸借のときにいう。居つき。居抜き。
※浮世草子・本朝桜陰比事(1689)四「此紙屋借宅を居(ヰ)成に買求めけるに」

い‐な・す ゐ‥【居成】

〘自サ四〙 居ずまいを正す。居成る。
今昔(1120頃か)二八片膝を立て、今片膝をば臥せて、極て月々しく居成して、少喬(そば)みて」

い‐な・る ゐ‥【居成】

〘自ラ四〙 きちんとすわる。居成す。
申楽談儀(1430)田舎風体「松明ふりあげ、きといなりし様、南大門にもうてざりし也」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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