岩偶(読み)がんぐう

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩偶」の意味・わかりやすい解説

岩偶
がんぐう

狭義には、縄文時代晩期に東北地方でおもに出土する人形の石製品。石材は、凝灰岩砂岩などの軟質なものが選ばれ、形状や用途は、同時期のいわゆる亀ヶ岡文化圏の土偶(どぐう)とほぼ同一とみられる。これとは別に、晩期には黒曜石片を輪郭のみ人形に加工した小形の岩偶も存在する。これは、北海道やカムチャツカ半島などでも出土しており、北方との関連が考慮される。

 なお、先土器時代後期の大分県岩戸遺跡からは、こけし形石製品が出土しており、また縄文時代初頭の愛媛県上黒岩(かみくろいわ)遺跡出土の扁平(へんぺい)な緑泥片岩の小礫(しょうれき)に、線刻で女性を表現したものがある。これらも広義の岩偶に含めることができるが、直接的に相互の系譜を結び付けることは現在のところむずかしい。

[大塚和義]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「岩偶」の意味・わかりやすい解説

岩偶
がんぐう

縄文時代の遺物の一つで,凝灰岩,砂岩などでつくられた石製の人形。土偶と同じように信仰関係があるものと考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の岩偶の言及

【土偶】より

…乳房や臀部を誇張した女性像が大部分で,男性を表すのはまれである。動物をかたどったものは動物土偶と呼ばれ,素材に石を使ったものは岩偶という。日本における動物土偶は,縄文時代後期から晩期にかけて,おもに東日本でみられ,猪が最も多く発見される。…

※「岩偶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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