日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩盤力学」の意味・わかりやすい解説
岩盤力学
がんばんりきがく
岩石、岩盤の材料学的性質、応力場における変形、破壊挙動などの力学的特性とその応用について研究する学問の総称。鉱山および土木技術者の現場における必要性から生まれた比較的新しい学問分野の一つである。同類のことばに岩石力学あるいは岩の力学がある。一般的には、これらは同義語として扱われているが、しいていえば岩石力学は、高温・高圧下における鉱物結晶の変形機構、岩石の三軸圧縮試験、トンネルなどの岩盤内空洞の安定解析から地殻運動の問題まで、より広い研究を意味するのに対して、岩盤力学は、現場における応用を主体とした工学的研究を意味するものとして区別できる。
岩盤は堅固な岩石や軟弱な岩石など性質の異なる岩石で構成されている。また地殻変動を受けて断層、褶曲(しゅうきょく)、節理、亀裂(きれつ)など地質的不連続面が存在する。このような岩盤内に坑道を掘るときは、単に岩石試験片から得た知識では予想のできない現象がおこる。岩盤力学はこれらの現象を予知し、対策を講ずるとともに、安全かつ経済的な坑道および岩盤構造物の設計基準をみいだすことを使命としている。現場計測技術、コンピュータによる数値解析技術の進歩および地質工学の発展により岩盤力学は目覚ましい進歩を遂げ、その応用範囲は鉱山、土木をはじめ、地球物理、地震学、ひいては石油・天然ガスの地下備蓄、地熱開発の分野にまで広がりつつある。
[木下重教]