改訂新版 世界大百科事典 「岩盤試験」の意味・わかりやすい解説
岩盤試験 (がんばんしけん)
rock foundation test
地球の表面下,ある深さのところに存在する岩石よりなる広い基盤を岩盤といい,岩盤試験は,岩盤の構造物支持基盤としての適否を判断するために,岩盤の強さや変形のしかたを調べる試験である。岩盤は粘土や砂で形成される地盤よりも強度が大きいので,岩石の性質から岩盤の力学的性質を推定しようとする試みはあったが,これまでその力学的性質についてさほど大きな関心が払われなかった。しかし,近年,構造物が大型化し,海底トンネル,海峡連絡橋,石油あるいはガス貯蔵用の地下空洞,地下発電所,大型ダムなどが次々に建設されるようになって,岩盤の力学的性質を知ることがきわめて重要となってきた。これはアーチダムの調査などの結果から,岩石と岩盤の性質が必ずしも一致せず,岩盤中の亀裂や節理の存在のため岩盤は岩石より強度が小さく変形も大きいと考えられるようになったためで,さらに大きな契機となったのは,基礎岩盤の欠陥から起こったフランスのマルパッセ・ダムの崩壊事故(1959)であった。
岩盤試験は,現場における現位置試験と現場で採取した岩石の試料を実験室で試験する室内試験とに分けられる。現位置試験には,変形試験,せん断試験,初期圧力測定試験,弾性波測定試験,透水試験があり,室内試験には物理化学試験と強度試験がある。変形試験は岩盤に加わる力と岩盤の変形の関係を知るために行うもので,トンネルを掘って岩盤を露出させ,この部分に円板を介してジャッキで力を加えて変形を計るジャッキ法や,ボーリング孔の側壁にゴム膜を通して圧力を加えて変形を観測するボアーホール法が一般的である。せん断試験は岩盤の強さを測定するための試験で,トンネルを掘削して底面に岩盤と一体化した岩石のブロックを設け,これに鉛直力と水平力とを同時に作用させて破壊強さを求める岩盤せん断試験,同様なブロックに互いに垂直に交わる三つの方向から力を加えて破壊強さを調べる三軸圧縮試験が代表的である。初期地圧は,自然状態で岩盤が受けている圧力であり,岩盤掘削時ならびにその後の岩盤の変形に大きな影響を及ぼす。あらかじめ変位測定用計器を岩盤中に埋設しておき,その近辺を掘り取り変形量を計る応力解放法や,この変形を元に戻すのに必要な圧力を測定する応力復元法がひんぱんに用いられている。弾性波測定法は,岩盤内の1点で爆破を起こし,その振動の伝達時間から岩の性質を調べようとするものである。また透水試験は,ボーリング孔内に高圧の水を注入して,岩盤を通る水の量を測定して水の通りやすさを求める試験である。
室内試験の一つである物理化学試験では,岩石の密度,岩石中の空隙の量,吸水性,吸水による膨張性,風化に対する安定性などを調べる。力学試験としては,一軸ならびに三軸圧縮試験があり,採取した岩石から切り出した円筒形の試験体を用いる。いずれの試験においても,試験体の両端面から力を加えて破壊強さを求めるが,三軸圧縮試験では,試験体を高圧の油のなかへ入れて試験を行う。
執筆者:木村 孟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報