市田郷(読み)いちだごう

日本歴史地名大系 「市田郷」の解説

市田郷
いちだごう

白岩しらいわ川とそれに合流した旧常願寺川(水橋川、現白岩川)の左岸地域に比定される。文明一七年(一四八五)九月二日の高野細河宛の室町幕府奉行人連署奉書案(内閣文庫蔵古文書)に「安禅寺殿御領越中国市田郷事、強入部云々、言語同断之次第也」、「親元日記」同日条に「安禅寺殿御申御寺領越中国市田郷事、高野細河殿押領云々」などとみえる。安禅あんぜん(現京都市上京区)後土御門天皇の姉の観心尼恵春が住持する真言宗尼寺で、応安五年(一三七二)六月二九日の法印定熙契状(徳富文書)によれば三条家領高野たかの(現立山町)の地頭請所のうち三分の一が安禅寺方丈文林大姉に永代譲与されており、市田郷と高野庄の支配は一連のものであると推察される。高野庄は白岩川中流域に所在した広大な庄園で、市田郷もその一角を占めていたとも考えられる。


市田郷
いちたごう

和名抄」東急本・高山寺本ともに訓を欠く。「日本地理志料」は「伊知多」と訓を付し、「事蹟通考」には熊本城の南にある市田橋が遺称地であるとする。建武三年(一三三六)七月一六日の小代宗重関所警固請文(小代文書)には市田口の関所がみえる。


市田郷
いちたごう

「和名抄」所載の郷。同書東急本・元和古活字本に「以知多」の訓がある。「長楽寺永禄日記」に市田がみえ、明治二二年(一八八九)市田いちだ(現大里村)が成立している。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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