平良文(読み)たいらのよしぶみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「平良文」の意味・わかりやすい解説

平良文
たいらのよしぶみ

生没年不詳。平安中期の関東の武将平高望(たかもち)の子。村岡五郎とよばれるが、この村岡には相模(さがみ)国鎌倉郡村岡(神奈川県藤沢市)と武蔵(むさし)国大里郡村岡(埼玉県熊谷(くまがや)市)の二説がある。嵯峨(さが)源氏の充(みつる)との合戦説話が『今昔(こんじゃく)物語』にみえ、甥(おい)の将門(まさかど)の養子として後を継いだとする説が『源平闘諍録(とうじょうろく)』などにみえる。後世に「武蔵野開発の父」と仰がれ、千葉、上総(かずさ)、秩父(ちちぶ)をはじめ三浦(みうら)、大庭(おおば)などの坂東(ばんどう)八平氏が延慶本(えんきょうぼん)『平家物語』などでいずれも良文の子孫として系譜づけられていることは事実はともあれ重要であろう。

[福田豊彦]

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朝日日本歴史人物事典 「平良文」の解説

平良文

生年:生没年不詳
平安中期の東国の武将。父は賜姓平氏一世の高望。村岡五郎と称す。京で衛門府の官人として仕官したらしいが,活躍の舞台は本拠地の下総国(千葉県,茨城県)であった。ここで上総国(千葉県)の良兼,常陸国(茨城県)の国香,下総国の将門ら兄や甥たちと対立した。平将門の乱(935~40)での動静は明らかでないが,『源平闘諍録』には,良文が将門の養子であったとするなど,将門と親しい関係にあったらしい。また『今昔物語集』は,武蔵国足立郡箕田郷の源宛 と仲違いしたことから合戦となり,両軍が見守るなか一騎打ちをして引き分け,その後は心を通わせたという話を載せる。土肥,三浦などの坂東八平氏はすべて良文の後裔を称している。

(朧谷寿)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「平良文」の解説

平良文 たいらの-よしぶみ

?-? 平安時代中期の武人
平高望(たかもち)の子。平将門(まさかど)の叔父武勇の士として知られ,「今昔物語集」に源宛(あつる)とたたかってひきわけた話がつたえられる。坂東八平氏の祖とされる。通称は村岡五郎。

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世界大百科事典(旧版)内の平良文の言及

【桓武平氏】より

…その内紛が拡大して国家権力への反乱という現象をも惹起した。国香が良将の子将門に討たれたことを契機にいわゆる平将門の乱が勃発し,また1028年(長元1)には平良文の孫忠常が反乱をおこしている。これらが桓武平氏に系譜をもつ東国豪族層の武士化の初期的現象であるといえよう。…

【相馬御厨】より

…《神鳳鈔》によればその面積1000町歩に及ぶ。桓武平氏の流れを汲む平良文が開発し,平安末期にはその子孫である千葉氏が伝領するところとなった。1130年(大治5)下総権介平常重(経繁)のときに下司職を留保して伊勢神宮に寄進し,その後豊受大神宮にも寄進しており,二宮領御厨として室町時代まで続いた。…

※「平良文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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