秩父(読み)チチブ

デジタル大辞泉の解説


埼玉県南西部の市。秩父盆地の中心地で、旧称は秩父大宮。秩父銘仙(めいせん)産地武甲(ぶこう)山石灰岩を産し、セメント工業が盛ん。夜祭りで知られる秩父神社がある。人口6.7万(2010)。
埼玉県西部、秩父市および秩父郡の総称。養蚕が盛んで、コンニャク・シイタケを特産。広く国や県の自然公園として指定。
秩父産の織物。また、「秩父絹」「秩父縞(じま)」の

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

埼玉県西部にある地方。行政的には秩父市および秩父郡皆野(みなの)、長瀞(ながとろ)、小鹿野(おがの)、横瀬(よこぜ)の4町と東秩父の1村よりなるが、一般的には秩父山地、秩父盆地を含む地域をいう。全体として山地が多く、平地は秩父盆地、荒川およびその支流の赤平(あかびら)川の沿岸にわずかに存在するにすぎない。秩父の名は『続日本紀(しょくにほんぎ)』に武蔵(むさし)国の郡名として載っているのが最初で、知知夫国造(ちちぶくにのみやつこ)の支配下にあったことに由来するといわれる。708年(和銅1)秩父郡からの和銅献上により年号を和銅(わどう)と改めたとされる古い歴史をもつ土地で、平安時代末から中世には秩父氏や武蔵七党の丹(たん)党や児玉(こだま)党に属する諸氏が活躍した。江戸時代、忍(おし)藩の保護と奨励により秩父絹の生産が盛んになり、一、六の市(いち)や秩父神社の大祭には絹市が立った。

 耕地は傾斜地が多いため、米、麦の生産は県下でもっとも少ない地域である。かつては養蚕が盛んで、比企(ひき)、大里(おおさと)、児玉の諸郡とともに埼玉県養蚕地帯の一翼を担っていたが現在は衰退している。おもな農産物はコンニャクイモ、シイタケなどである。また、観光客の増加に伴い、観光農園が盛んである。秩父でもっとも中心的な生産物は武甲山(ぶこうざん)(1295メートル)の石灰岩で、武甲山の東側に露頭があり、その埋蔵量は約2億トンといわれ、多くの企業によって採掘され、山容は著しく変化し、荒々しい山肌を示している。これらのうち太平洋セメントの三輪鉱山(みのわこうざん)がもっとも大規模で、露天掘りを行っている。石灰岩は秩父市内の工場のほか、熊谷(くまがや)・日高の工場でセメントにしている。もう一つの中心的な産業は観光である。広く連なる秩父の山々、清冽(せいれつ)な流れの荒川本支流の渓谷など、秩父の観光資源は数多く存在するため、国や県ではこの地域を自然公園として指定しており、秩父多摩甲斐国立公園(ちちぶたまかいこくりつこうえん)、県立武甲自然公園、県立長瀞玉淀(ながとろたまよど)自然公園、県立上武(じょうぶ)自然公園、県立両神自然公園、県立西秩父自然公園がある。このうち秩父多摩甲斐国立公園は、秩父市大滝地区、小鹿野町両神地区の西部を含むもので、三宝山(さんぽうざん)(2483メートル)や甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)(2475メートル)の高峰をはじめ、雲取山(くもとりやま)、三峰山(みつみねさん)、両神山などや、雁坂(かりさか)峠、新緑や紅葉の名所として名高い中津峡などがある。武甲自然公園は武甲山をはじめ、橋立鍾乳洞(はしだてしょうにゅうどう)や秩父七湯(しちとう)といわれた鉱泉がある。長瀞玉淀自然公園には、荒川沿岸4キロメートルにわたって続く国指定名勝天然記念物の長瀞や、その下流の玉淀ダムの景勝地がある。これらの景勝地を訪れる観光客は、西武鉄道秩父線の開通(1969)により便利になり、増加している。また、上越新幹線、高崎線の熊谷駅から秩父鉄道で来訪することもできる。

[中山正民]


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精選版 日本国語大辞典の解説

[1]
[一] 埼玉県西部の地名。秩父盆地の中心。市街地は荒川の河岸段丘上に発達。江戸時代は絹市が立ち、秩父絹の集散地として知られた。セメント・製材・電子工業が行なわれる。秩父神社、金昌寺、黒谷の和銅採掘遺跡などがある。一二月の秩父夜祭は有名。旧称大宮。昭和二五年(一九五〇)市制。
[二] 埼玉県の西端の郡。また、(一)も含めた広域地名。荒川上流域の山岳地帯にあり、東京・山梨・長野・群馬の都県と接する。
[三] 能楽の曲名。秩父重忠(畠山重忠)はわが子重安(しげやす)が北条時政の妻槇(まき)の方のざん言によって、鎌倉の由比ケ浜で処刑されたことを聞き、怒って兵を挙げる。鎌倉方の討手の大将安房の佐久間が立ち向かうが、かえって重忠に生け捕られる。廃曲。
[2] 〘名〙
① 秩父産の織物。また、「ちちぶぎぬ(秩父絹)」「ちちぶじま(秩父縞)」などの略。
※落語・欲しい物覚帳(1896)〈四代目橘家円喬〉「少し裏は優雅(じみ)だったけれ共糸吉(いとよし)だから秩父𥿻(チチブ)を付けて八丈の袖口、仕立揚りが十三円五十銭」
② 秩父三十三所の霊場めぐりをすること。
※雑俳・柳多留‐二一(1786)「ちちぶの留守にはらんだで大おこり」

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