1996年に登録された中国の世界遺産(文化遺産)。廬山(ルーシャン)は、江西省九江市の南、鄱陽湖畔にそびえる長さ約25km、幅10kmの連山。「奇秀にして天下に冠たり」と形容されるとおり、古くから仏教の聖地として、また、風光明媚な名勝として知られ、東晋(317~420年)の時代の詩人陶淵明は「菊を採る東離の下、悠然として南山を見る」(『飲酒二十首』其の五)という詩を詠んだ。唐代の詩人李白は「望廬山瀑布」を、また、白居易(白楽天)は「香炉峰の雪」を詩に残している。この白居易の詩は、日本では清少納言が『枕草子』の中で、香炉峰の雪は簾(すだれ)をかかげてみる、と援用したことでも有名である。ちなみに香炉峰は、廬山の北峰を構成する山である。廬山の最高峰は海抜1474mの漢陽峰で、五老峰や九奇峰などの峰々が連なり、霧が山々を覆う幻想的な景観で知られてきた。また、廬山一帯は東晋時代に、中国の浄土教(仏教)の発祥地となった東林寺が建立され、中国四大書院の筆頭に挙げられる白鹿洞書院をはじめ、道教、儒教の寺院が建てられて、さまざまな宗教の聖域となった。この廬山一帯の歴史的な景観は中国により国立公園に指定されているが、これがそのまま世界遺産として登録されることになった。◇英名はLushan National Park