改訂新版 世界大百科事典 「建設公害」の意味・わかりやすい解説
建設公害 (けんせつこうがい)
建設活動に伴って発生する公害は,公害対策基本法によれば,騒音,振動,地盤沈下の三つを典型としている。しかし建設工事に伴う公害紛争の原因には,これら3種の公害に限らず,建設活動に伴って生ずる相当範囲にわたる人の健康または生活環境にかかわる被害の発生したもの,あるいは発生の可能性があるものも含まれる。建設公害には建築物によって発生するものとその建設工事から生ずるものの二つがある。前者には高層建築物による日照阻害,圧迫感,眺望阻害,風害,電波障害,また道路,駐車場施設などによる騒音,振動,排気ガス,さらに建物の用途によっては道路交通障害,給排水障害,水質・大気汚染などがある。一方,後者では杭打機,空気圧縮機,鋼球などを使用する作業に伴う騒音・振動,地下工事による地下水位の低下・枯水,地盤沈下や家屋の傾斜・倒壊,工事用車両の通行・駐車による渋滞・交通事故や道路破損,残土・残材の不法投棄,夜間工事の照明・騒音などがあげられる。これら被害の発生を防止するため騒音規制法,振動規制法など各種の法令が適用され,また各地方自治体でも条例の制定,行政指導が行われており,建築確認申請時に周辺住民の同意書が必要なこともある。
執筆者:古阪 秀三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報