神義論ともいう。ライプニッツの造語で、狭義には無神論や善悪二元論を論駁(ろんばく)して、この世界に存在するあらゆる害悪にもかかわらず、神の善であることを弁護する議論をいう。その先駆思想はアウグスティヌスやデカルトにもみられるが、この主題を最初に独立させ、体系的に論じたのはライプニッツの主著『弁神論』Essais de théodicée sur la bonté de Dieu, la liberté de l'homme et l'origine du mal(1710)であった。広義には、自然神学あるいは合理的神学の意味で解され、神の存在証明、神の摂理と人間の自由の問題、人間霊魂の不死の証明、神に対する宗教的、道徳的義務の問題などを含む。この意味で、弁神論は19世紀のフランスでは、論理学、心理学、道徳と並んで、哲学の講義の四部門の一つに数えられていた。
[坂井昭宏]
『山本信著『ライプニッツ哲学研究』(1953・東京大学出版会)』▽『田中英三著『ライプニッツ的世界の宗教哲学』(1977・創文社)』
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…ライプニッツが最初に用いた哲学・神学用語。〈弁神論〉ともいい,世界における悪の存在が神の全能と善と正義に矛盾するものでないことを弁証しようとする議論をいう。M.ウェーバーは《古代ユダヤ教》の中で,《創世記》3章の堕罪物語に人類最初の倫理的神義論がみられるというが,神の義(ただ)しさを弁証することは,捕囚によって過去の伝統から断たれたイスラエルに始まるとみるのがやはり適当であろう。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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