ライプニッツが最初に用いた哲学・神学用語。〈弁神論〉ともいい,世界における悪の存在が神の全能と善と正義に矛盾するものでないことを弁証しようとする議論をいう。M.ウェーバーは《古代ユダヤ教》の中で,《創世記》3章の堕罪物語に人類最初の倫理的神義論がみられるというが,神の義(ただ)しさを弁証することは,捕囚によって過去の伝統から断たれたイスラエルに始まるとみるのがやはり適当であろう。《イザヤ書》40章以下で,神が捕囚民の解放のために異教の王を用いることは,イスラエルの神が創造者にして歴史の支配者であればこそ可能で,他の神々にはその力はないと論じられる。しかも神を歴史的救済者としてとらえたところに旧約宗教の特徴があるといえる。神の存在と善を全体的観点や目的の理念に従って論じることはプラトンの《国家》《ティマイオス》《法律》に,またストア学派の哲学にも見いだされる。ライプニッツは三十年戦争後の混乱の中で新・旧両教会の和解につとめ,イデオロギーならざる〈普遍学〉の興隆を企てた人であるが,世界の調和は最善の原理たる〈神の漸近線〉に支えられていること,また個物の存在は単なる固有性ではなく〈共可能性compossibilité〉に負っていることを説いてオプティミズムを表明した。
執筆者:泉 治典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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