啓示にたいする信仰を出発点とする啓示神学と違って,自然的理性の光の下に到達された,神の存在や属性をめぐる認識の学的体系。哲学的神学あるいは神義論と同義に用いられることもある。神(あるいは神々)と宇宙世界の根源とを同一視する立場からすれば,自然神学の歴史はイオニアの自然哲学者までさかのぼることになる。同様に,この語をもってプラトンやアリストテレスの神学について語ることができる。用語としては前1世紀のローマの文人ウァロが神学を神話的,自然的,国家的の3種類に分類したのに由来する。しかし自然神学の概念が明確になったのは,中世のスコラ学者によって学としての啓示神学が確立されたのにともない,それとの関係で自然的理性ないし哲学の役割と限界が自覚されたことによる。
ルターは中世末期に強まった信仰と理性の分離傾向を徹底させ,〈信仰のみ〉の立場を掲げ,自然神学を理性の越権として拒否した。カントの批判哲学は,このような信仰・理性分離の立場を明確に体系化したものといえる。現代において自然神学の問題に焦点があてられたのは,カトリック神学とは違った意味で自然神学の可能性を主張するE.ブルンナーと,それに厳しく〈否〉と答えるK.バルトとの間で行われた神学論争においてであり,後にティリヒ,ブルトマンもバルト批判の立場でこの論争にかかわった。
20世紀中ごろまでのカトリック神学においては,自然神学に関するいわゆるトマス的立場が通説であった。しかし,この立場は多分にC.ウォルフの合理主義の影響下にあり,自然神学は,一般的形而上学としての存在論から区別された,特殊的形而上学の一部門として位置づけられていた。現在のカトリック神学の内部では,自然神学の問題をめぐって,神認識は一般的形而上学の結論である,一般的と特殊的形而上学の区別は根拠がなく,神認識を可能にするのは存在(エッセ)の立場である,自然神学は啓示神学ないし恩寵の枠内で基礎づけられる,などの多様な学派的主張が見いだされる。
執筆者:稲垣 良典
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