化学辞典 第2版 「弾性ヒステリシス」の解説
弾性ヒステリシス
ダンセイヒステリシス
elastic hysteresis
応力-ひずみ関係の弾性範囲内において,負荷と除荷のサイクルでループを描き,エネルギー損失を生じることをいう.この様子は,結晶材料と非晶質材料とでは相違がある.一例を図に示す.
結晶材料の第一の原因は熱弾性余効で,平衡状態の負荷・除荷では生じなかったものが急激にこれを行うと,ポアソン効果による体積変化に伴って,発熱冷却が生じるために起こる.このほか,転位の運動,負荷により格子間原子が単位胞内でジャンプして,規則化するために起こるものなどがある.後者については,体心立方金属中に固溶しているC,N,O,Bなどの原子半径の小さい格子間原子がひずみを受けて,より安定な方位への分布が増加し,除荷によってもとのランダムな分布へ戻るスネーク規則化という現象がある.弾性ヒステリシスは異常な内部摩擦を生じるので,振動の減衰として測定されることが多く,複数の原因によるものが知られている.高分子材料は,一般に弾性ヒステリシスが大きく,主として分子鎖のコイルの伸長・収縮のふるまいの相違として解釈されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報