材料に力を加えて塑性変形を起こさせた後,いったんその力を除去して再負荷する場合,前に生じた変形と逆方向の変形が生ずる力を加えた際の降伏点が,前に生じた変形と同じ方向の変形が生ずる力を加えたときよりも低下する現象。1886年ドイツのJ.バウシンガーにより発見された。例えば,材料の単調引張応力-ひずみ曲線を図のOAB,Aまで変形させた後,力を除去する場合をOACとする。ここで前の変形と同じ方向に再負荷するときの応力-ひずみ曲線CDBはCABにほとんど一致するが,逆方向再負荷により得られる応力-ひずみ曲線はCEのようになり,これをC点にて180度回転したCE′を考えれば,CDBよりも降伏点が低下しており,より小さい応力で塑性変形が始まることがわかる。
執筆者:朝田 泰英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
一般的には,多結晶の金属に,はじめにある方向に負荷をかけて塑性変形を起こさせておいて,次に反対方向に負荷をかけた場合に,はじめの変形のときより小さい弾性限または降伏応力を示すことがある.これをバウシンガー効果という.ときにはもっと広い意味に解釈されることもある.すなわち,多結晶,単結晶を問わず塑性変形を行わせると,必ずひずみ硬化するはずであるが,ときとして予変形において内部のミクロな応力分布の変化が生じる応力ひずみ曲線のすべての変化を含む軟化現象,すなわち広い意味の降伏応力の低下がある.これを総称してバウシンガー効果とよぶ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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