弾道ミサイル防衛(読み)ダンドウミサイルボウエイ

デジタル大辞泉 「弾道ミサイル防衛」の意味・読み・例文・類語

だんどうミサイル‐ぼうえい〔ダンダウ‐バウヱイ〕【弾道ミサイル防衛】

ビー‐エム‐ディー(BMD)

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知恵蔵 「弾道ミサイル防衛」の解説

弾道ミサイル防衛

2006年7月5日、北朝鮮がテポドン2号、ノドンスカッド、計7発をロシアのナホトカ沖に発射、同年10月9日には核実験も行ったため、日本ではミサイル防衛配備を急いでいる。防衛省は本来07年3月パトリオットPAC3地上配備型迎撃ミサイル(射程約20km、移動発射機2両に計8発)を航空自衛隊入間基地(埼玉県)に配備、08年3月までに関東地方に計8両(32発)が配備される。イージス艦「こんごう」は07年12月18日(日本時間)ハワイ諸島沖で「SM3」海上配備型迎撃ミサイルによる弾道ミサイル迎撃実験に成功。「こんごう」は08年1月から配備につき、弾道ミサイル防衛が試験的ながら、具体化した。日本の計画はSM3搭載のイージス対空システム搭載護衛艦を日本海に展開し、高度120〜150km以上の大気圏外で2回迎撃、撃ち漏らした目標に対し弾着直前にPAC3各2発を発射し、それぞれの命中率が50%とすれば計約94%の破壊公算がある、とされる。航空機と違い、弾道ミサイルは一定の方向から放物線で飛来するので、その迎撃はフライの球をとるのに似て楽な面もある。だが、マッハ8〜9の高速で飛来する直径約1mの弾頭に直接衝突して破壊する必要があるほか、弾道ミサイルが宇宙でオトリ弾頭(アルミ箔風船)を多数放出すると、空気抵抗がないため本物の弾頭と同じ速度、軌跡で飛行し識別が困難で、さらに複数の本物の弾頭を放出されると一層迎撃は困難となる。また現在のノドンのような単純なミサイルも、同時に多数を一斉発射されると突破される。実験では標的のミサイルは1発だけで、発射時間も飛行コースも事前に分かっていたが、実戦では相手はいつ、どこからどこへ向けて撃つか、教えてはくれない。米国はミサイル防衛の実戦配備を急ぎ、なお開発途上のSM3ミサイルを10隻に配備するが、試作品で能力不足のため、各艦数発しか搭載しない。より大型の後継ミサイルを開発中で15年完成予定。海上自衛隊は10年度末までにイージス艦4隻を改装し、SM3を搭載、航空自衛隊は07年度末に関東地方にPAC3発射機8両(32発)、10年度までに阪神中京、九州北部、青森周辺にも配備される。だが弾道ミサイル数発としか交戦できない弾数である上、PAC3は射程が短く守備範囲が局限されるため「気休め」程度でしかない。1999年度から07年度までに5638億円を投入、08年度は1338億円を要求負担長期間続くとみられる。

(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)


弾道ミサイル防衛

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