潜水艦(読み)センスイカン(英語表記)submarine

翻訳|submarine

デジタル大辞泉 「潜水艦」の意味・読み・例文・類語

せんすい‐かん【潜水艦】

魚雷・ミサイル・艦砲などを装備し、水中または水面上を航行して攻撃・偵察などをする艦艇。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「潜水艦」の意味・読み・例文・類語

せんすい‐かん【潜水艦】

  1. 〘 名詞 〙 水面下で行動できる戦闘艦艇。魚雷、ミサイル、艦砲など、攻撃用および捜索用の武器を装備し、隠密性を利用して敵に接近し、攻撃・偵察・哨戒(しょうかい)など多目的な任務にあたる。サブマリン。〔飛行機と潜水艦(1928)〕

潜水艦の語誌

明治時代、submarine は submarine boat と呼ばれる小型のものであったために「潜航艇」などと訳されていた。第一次世界大戦の頃には次第に大型化され、それに伴い「潜水艦」が用いられるようになった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「潜水艦」の意味・わかりやすい解説

潜水艦 (せんすいかん)
submarine

主として潜航して作戦行動を行う軍艦をいう。水上艦艇に比べ,水面下を行動するため,発見は困難であり,敵の制海権下でも行動が可能である。

潜水艦の発想は古くよりあったが,実戦で最初に使用されたのはアメリカ独立戦争中のことで,アメリカ軍は人力推進・1人乗りの〈タートルTurtle〉を使用,イギリス艦の艦底に時限爆薬をとりつけようとして失敗に終わっている。その後,アメリカ南北戦争において南軍の人力推進の〈ハンリーHunley〉は艦首より出した棒に火薬をつけ,北軍の軍艦に体当りし,これを撃沈したが,自らも沈没した。潜水艦が軍事的に実用化されるのは,空気を必要とせず水中で使用可能な動力源である電池-電動機の技術が確立し,魚雷が実用化される19世紀末~20世紀初頭である。電池を使用する潜水艦の正式採用はフランスが最初で1886年,アメリカが1900年,ドイツが1906年である。これらは単殻・隔壁なしの船体で,水中ではおもに電池-電動機,水上航走はガソリンエンジンもしくは蒸気機関で推進されたものであり,潜航期間も短く,航洋性に劣っており,主として近海で魚雷により奇襲攻撃を行うことを目的とした。

 第1次大戦が始まる前までには,潜水艦用ディーゼルエンジンが実用化され,イギリス,ドイツはヨーロッパ近海域で数週間の作戦行動が可能な潜水艦を保有していた。1914年9月,ドイツ潜水艦は魚雷を使用してイギリスの軍艦を初めて撃沈した。イギリスは14年11月,ドイツの海上封鎖を宣言した。これに対して海軍力に劣るドイツには,イギリスの逆封鎖を潜水艦によって行おうとする発想が生まれた。戦時国際法によれば,敵国の非武装商船に対しては,警告を与え,乗員を退船させた後,また中立国の商船に対しては,臨検を行い戦時禁制品を敵国へ輸送中の場合にのみ,乗員を退船させた後,撃沈することが許されていた。しかしこの間,浮上して待つことは,潜水艦にとって危険なことであった。アメリカの参戦を心配するドイツは無警告撃沈を初めは行わなかったが,17年1月,一定の海域内にある全船舶を無警告で撃沈する無制限潜水艦戦を開始した。しかし,戦術的には効果をあげたものの,これによりアメリカの参戦を招き,敗北する。

 第2次大戦においても,ドイツは潜水艦に力を入れ,通商破壊作戦を行った。初期には中立国商船に対し無警告撃沈をさけたが,1940年8月に無制限潜水艦戦を開始,船舶に多大の被害を与えた。ドイツの戦法は船団を多数の潜水艦で夜間に襲うもので,狼群戦法Rudeltaktikと呼ばれた。日本は潜水艦をおもに軍艦の攻撃に使用し,組織的な通商破壊作戦は行わなかった。一方,アメリカは軍艦の攻撃に使用するほか,大戦中期以降は通商破壊作戦を日本と占領地をむすぶ海上で展開,日本船舶に多大の被害を与えた。また大戦中期以降ヨーロッパ戦線においては,航空機,レーダー,対潜水艦戦術などの発達により,浮上充気充電時の被発見,水中回避速力の不足,水中持続時間の不足などの弱点を持つドイツの電池潜水艦は無力化された。このため大戦末期,ドイツは潜水艦の水中高速化を進め,スノーケル装置を実用化し,空気取入用のスノーケルマスト以外は全没のままディーゼルエンジンを動かし,充電可能な潜水艦を建造したが,戦局を変化させることはできなかった。

 戦後も潜水艦の改良は続けられ,水中高速のための涙滴(ティアドロップ)型船の採用,潜航深度増大のための高い圧力に耐える新材料の開発,そのほか主機,電池,空気浄化装置等の改善により,水中速力20ノット,水中持続時間100時間以上で“深く静かな”潜水艦が出現している。また原子力機関の誕生により,1954年10月世界初のアメリカ海軍原子力潜水艦ノーチラス〉が就役し,海中を高速で長時間航走できることとなった。

(1)原子力弾道ミサイル潜水艦 記号SSBN。戦略核弾頭ミサイル発射を主任務とする戦略潜水艦で,1959年に進水したアメリカ海軍の〈ジョージワシントン〉(水中排水量6888トン)が最初である。潜水艦は敵に発見されにくく,地上のミサイル基地に比べ敵の攻撃から生き残りやすいため,アメリカ,イギリス,ソ連(ロシア),フランス,中国の各核兵器保有国はこの種の潜水艦の開発を進めてきた。現在,潜水艦発射弾頭ミサイル(SLBM)の射程は4200マイル級(1マイル=約1.6km)であるが,アメリカとソ連(ロシア)は6000マイル級を開発中であり,これが完成すれば自国の制海水域から敵への攻撃が可能となる。81年アメリカ海軍は〈オハイオ〉(水中排水量1万8700トン,トライデントSLBM24発)を就役させ,80年ソ連海軍はタイフーン級(水中排水量2万6500トン,SSN18 SLBM 20発)を進水させている。

(2)原子力巡航ミサイル潜水艦 記号SSGN。対艦ミサイル,巡航ミサイルの発射を主任務とする潜水艦で現在ロシアだけが保有する艦種。アメリカ海軍は1960年にレギュラスを浮上させて発射する〈ハリバット〉1隻を建造しただけで現在はない。ソ連はアメリカの強大な空母部隊に対抗するために1963年エコー級(水中排水量5800トン,SSN12/3 8発)を就役させて以来,ロシア連邦になった現在も22隻を保有している。これらは対艦ミサイル潜水艦といったほうが妥当という見方もあるが,1985年就役のオスカー級(水中排水量1万8300トン)は,魚雷と対潜ミサイル兼用の発射管8本,内外殻間に装備された24本のSSN19対艦ミサイル発射装置を有し,その強大な攻撃力はアメリカ空母部隊の一大脅威となっているとともに,やがて開発されるであろう長距離巡航ミサイルをミックスすることにより,戦略潜水艦としての機能も有する新SSGNのさきがけになるものと見られる。これに対しアメリカでは,魚雷発射管から発射するハープン対艦ミサイル(射程300マイル),トマホーク巡航ミサイルで対処している。さらにSSBNからSSNに種別変更されたベンジャミン・フランクリン級等のポラリス発射筒を射程1200マイル級トマホーク用に改造したり,改良型ロサンゼルス級にトマホーク,ハープーン用垂直発射筒を増設する対応が実行されてきたが,96年にシーウルフ級SSN(水中排水量9137トン,トマホーク12発のほかハープーン等も装備)を完成させた。

(3)原子力潜水艦 記号SSN。魚雷や対潜対艦巡航ミサイルを発射し,艦船(潜水艦を含む)を攻撃する攻撃型潜水艦。

(4)非核動力潜水艦 記号は(1)~(3)のものからNを除いたもの。電池潜水艦を表し,特にSSはSSNに比べて機動性に欠けるが,その静粛性,安価なことを生かし,聴音,哨戒,監視能力の高い潜水艦として各国で建造されており,今後も高性能化が進められるものと考えられる。

(1)潜航の条件 潜水艦が水上艦艇と大きく異なる点は,(a)浮上・潜航を行うこと,(b)水中で高い圧力を受けること,(c)水中で三次元の運動を行うことである。水中に静止するためには,潜水艦に働く浮上と重力が釣り合っていることが必要であり,水上に浮かんでいるためには,浮力が重力より大きくなければならない。この浮力の差,つまり浮上しているのに必要な浮力と水中にあるのに必要な浮力の差を予備浮力と呼ぶ。潜水艦ではこの浮力の調整を,タンクに海水を出し入れすることで行う。潜航にはバラストタンクに海水を入れ,のぞむ深さでこのタンクの海水を圧縮空気で排出して釣合いをとる。浮上の場合,圧縮空気でバラストタンクの海水を排出して浮上する(図1)。なお実際の潜航・浮上では後述の潜舵,横舵も使用される。

 水中では高い圧力を受けるため,船体が水圧により破壊されないような構造が必要となる。圧力に最も耐える形は球であるが,潜水艦の船型に適さないため,円柱を主体とした形の耐圧部がつくられる。耐圧部が水中で受ける抵抗を少なくする形につくられ,そのまま海水に接しているものを単殻構造,その役割を耐圧部の外側を覆う非耐圧部が受け持つものを複殻構造と呼ぶ。複殻構造においては,耐圧部と非耐圧部の間には水圧がかかり,非耐圧部はその両側の圧力が釣り合うため破壊されない。耐圧部の強度は,その材料,加工技術などに左右される。現在では,材料としては調質高張力鋼(製造過程で,ローラーで強くのばし,高い張力に耐えられるようにした鋼)などの鋼が用いられるが,ソ連(ロシア)のアルファ級潜水艦はチタン合金を使用し,可潜深度1000m以上を達成しているといわれる。

 水中で三次元の運動を行うため,水上艦の持つ縦舵のほかに,セールまたは艦首に潜舵,艦尾に横舵を持ち,この舵で水中での船体の縦方向の姿勢制御,深度変化などを行う。さらに魚雷を射出した後の重量バランス(トリム)をとるためなどに使用するトリムタンクその他を持つ。

(2)動力 内燃機関を運転するためには酸素が必要であり,一般に酸素は空気から取り入れられる。このため,軍用の潜水艦が実用化されて以来,水上航走用には内燃機関が,また水上にあるときに内燃機関で発電機を回し電池に充電しておき,水中航走にはこの電池で電動機を回転させるという2系統の動力が使用されてきた。内燃機関としてはガソリンエンジンが当初使用されたが,より安全な燃料を使用するディーゼルエンジンが実用化され,それに変わった。しかし電池は短時間で切れ,潜航時間は限られたものであった。第2次大戦中,レーダーなど探知機器の向上により,水上にある潜水艦は非常に発見されやすいものとなった。ドイツはこの時期にスノーケルを実用化し,水上にスノーケルを出すことでディーゼルエンジンの運転に必要な空気を取り入れることを可能とした。さらに,過酸化水素を触媒で水と酸素に分解してそれに燃料を加え,発生する水蒸気でタービンを回転させるワルタータービンを使用した潜水艦の実験を行った。戦後は,酸素の必要がなく1回の燃料補給で長時間運転できる原子力が実用化され,潜水艦に使用されることとなった。一方,通常動力潜水艦においても静粛性と高速化を目ざし,蓄電池,発電機,電動機,内燃機関の開発が進められている。従来,通常動力潜水艦において動力は一般に,ディーゼルエンジン→クラッチ→発電機→スクリュープロペラの順に伝えられたが,現在ではディーゼルエンジン→発電機,電動機→スクリュープロペラという電気推進方式が採用されている。また,燃料電池など他の動力源の開発も進められている。

(3)船型 以前は,潜水艦はおもに水上を航走し,必要に応じて水中を航走するものであった。このため,船型も水上航走に適したものが採用された。その後,おもに水中を航走するものへと変化したことにともない,水上・水中両方の航走を考えた鯨型をへて,水中航走に重点をおいた涙滴型へと変化した(図2)。

(4)兵器システム 他の軍艦と同様,センサー,攻撃兵器,指揮・統御システムなどを搭載する。センサーとしてはソナー潜望鏡レーダー,敵のレーダー電波で照射されていることを知るための警戒装置等が,攻撃兵器としては第2次大戦までは魚雷機雷のほか浮上時に使用する大砲や機関銃を搭載していた。現在の潜水艦には魚雷や機雷のほか,各種ミサイルが搭載され,従来の艦船攻撃任務のほかに,陸上を核兵器で攻撃する任務が加わった。

 電波は水中に入ると大きく減衰し,その度合は短波長のものほどはげしく,水中にある潜水艦と通常の電波で交信することはできない。戦略潜水艦に対し指令を即時に伝えることはきわめて重要であり,このための通信手段が開発されている。一つは超長波(VLF,周波数10~30kHz)を使う方法である。このため米ソ両国は世界各地に送信基地をもうけるほか,VLF送信機をそなえ長大なアンテナ線を出して飛ぶ専用機を常時飛行させている。また,アメリカは地下に長大なアンテナを配置し,極超長波(ELF,周波数10kHz以下)を使用してより深く潜航している潜水艦に送信する実験開発を行っている。一方,短波~極超短波の電波も使用されており,アンテナを海面に露出する必要があるが,(a)通信を圧縮し単時間ですまし,(b)電波の指向性を強めて敵に発見されることを防ぐ,などの工夫がなされている。

 航法装置としては他の軍艦と同様,衛星航法,電波航法などが使用されるほか,外洋で作戦行動を行うものでは慣性航法システムが搭載される。なお航行衛星,オメガ(電波航法)などはVLFを使用しており,深度が浅ければ受信可能である。

 潜水艦の技術発展は後述の対潜水艦戦技術の発展に対応しており,敵に発見されず,もし発見されても攻撃を回避できるよう,水面上にできるだけ物体を露出せず,水面下を深く高速で運動し,かつできるだけ音を放射しないよう技術的改良が現在も続けられている。
執筆者:

英語でanti-submarine warfareといい,ASWと略す。敵潜水艦の活躍を封ずるための諸活動をいい,その中心は,潜水艦を捜索,発見し,攻撃する戦闘にある。

 第1次大戦において,ドイツの潜水艦は連合国の軍艦,商船を多数撃沈し,潜水艦は重大な脅威となった。大戦初期は発見手段は目視に限られ,浮上中の潜水艦を発見後,大砲,機関銃等で攻撃するにとどまったが,大戦後期にはスクリュー音など潜水艦の発する音を聴取するソナー,投下して潜水艦深度付近で爆発する爆雷が開発され,潜航中の潜水艦の発見,攻撃が可能となった。作戦的には,商船を集団で航行させ,それに軍艦を同行させる船団護衛制を採用し,近海では艦船,航空機による哨戒,機雷の敷設,防潜網(潜水艦の侵入を阻止するため港湾の入口に張る網)等により防御し,大戦後期には被害を著しく減少させた。

 第2次大戦でも,ドイツの潜水艦は海上交通破壊に力を注ぎ,特に大戦初頭には多くの商船を撃沈した。これに対して連合国は,船団護衛制,航空機による哨戒,機雷,防潜網等による防御に加え,ASW専用に編成された対潜支援隊(駆逐艦3隻),対潜掃討隊(航空母艦1隻,駆逐艦3隻)などで対抗した。兵器の面では,レーダーの出現,ソナーの改良,爆雷にかわる前投兵器(潜水艦を包囲するように多数の水中爆発物を投射する兵器)の出現などにより,早期発見,攻撃が可能となった。ドイツは,スノーケルの開発など潜水艦の改良を重ねたが,大戦後半には特に航空機による哨戒,攻撃が成果をあげ,潜水艦は活動を封じられた。一方,アメリカの潜水艦も日本に対し海上交通破壊を行ったが,日本はASW技術が未発達であり,その活動を封ずることができなかった。

 第2次大戦後に誕生した原子力潜水艦の潜航時間は無限ともいえるようになり,核弾頭ミサイルを搭載する戦略核潜水艦はアメリカ,ソ連など大国の核戦略の重要な柱となるなど,潜水艦の重要性は一段と増大した。このため,各国ともASWの強化拡充に力を注ぐこととなった。

 現在の潜水艦は,浮上する必要がほとんどなく,音が静かになり,水中速力,潜航深度の増大により攻撃を回避できるようになるなど,発見,攻撃は困難である。さらに,戦略核潜水艦の搭載ミサイルは射程が6000カイリもあり,ASWは全海洋を対象として行う必要が生まれた。

潜水艦を捜索,発見するおもな方法は次のとおりである。(1)海面上に機器を露出している場合は目視(暗視装置なども使用),レーダーによる。(2)電波を発した場合,電波探知機により電波の方向から位置を測定する。(3)潜航している場合は次の方法による。(a)赤外線探知機 特に原子力潜水艦は多量の熱を排出するため,海水温の差を赤外線放射量の差として検出。(b)磁気探知機 海中に潜水艦が存在すると地磁気が変化することから測定。(c)ソナー 潜水艦の発する音を聴取するパッシブソナーと,音を出し潜水艦で反射されて戻ってくる音から位置を求めるアクティブソナーにより測定。(d)レーザーを利用する探知機 レーザー光線で海中を照らし捜索。

 これらの方法を使用したASW兵器は次の通りである。(1)対潜航空機 ソノブイシステム(ソナーを組み込んだブイ(浮標)を海中に散布し潜水艦の音を聴取する)を搭載する対潜航空機はASWの中心で,このほかレーダー,電波探知機,磁気探知機を併用している。(2)水上艦艇 自艦の発する音に影響されないようソナーを艦から離して曳航する遠距離用曳航ソナー,可変深度ソナー,レーダー電波探知機等を使用する。またソノブイシステム,吊り下げソナーを使用する対潜ヘリコプターを搭載する艦も増えている。(3)攻撃型潜水艦 隠密に移動し最適の深度に移動できることから重視されている。ソナーを中心にレーダー,電波探知機を使用する。(4)広域海洋監視システム(SOSUS) 雑音のない深海底に音響受信機を設置し,信号を陸上へ伝え,広い海域を監視する。(5)海洋監視衛星 レーダー,赤外線探知機,磁気探知機,レーザーを利用する探知機等を搭載する軍事衛星で監視する。

 ASWを作戦的に分けると次の通りである。(1)相手国の基地付近での待伏せ 相手国の基地付近に攻撃型原子力潜水艦や情報収集艦を配置し,相手国潜水艦の出入を監視する。(2)狭水路の監視 相手国の潜水艦が外洋に出るために通らなければならない狭水路を,広域海洋監視システムや艦船,航空機で監視する。(3)艦船および航路帯の防御 各種水上艦艇,潜水艦および航空機によって護衛する。

 なお,各種兵器によって得られた情報は,地上にある総合管理システムによって分析,記録されている。

第2次大戦以前は,機雷と爆雷がおもな攻撃兵器であった。第2次大戦以後は,特に原子力潜水艦の水中運動能力の向上に対処するため,攻撃兵器も飛躍的に進歩した。水上艦は,ロケット等により空中を高速で飛び,目標近くで爆雷やホーミング魚雷(艦船の音をとらえ自動的に追尾する魚雷)となる対潜ロケットまたは対潜ミサイルを搭載している。潜水艦は,有線で目標近くまで誘導されたのちホーミングに移る高性能魚雷を搭載している。対潜航空機および対潜ヘリコプターは,ホーミング魚雷,爆雷を搭載している。また機雷についても,触発機雷のほか,磁気,音響,水圧の変化を感知して爆発する感応機雷,感知したのち目標に向かって進む魚雷的な機雷も使用されている。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「潜水艦」の意味・わかりやすい解説

潜水艦
せんすいかん
submarine

水面下を潜航し行動できる軍艦の総称。小型のものは潜水艇または潜航艇という。隠密性を最大の特徴とし、潜航中の艦を捕捉(ほそく)し有効な攻撃を加えることが容易でないので、敵勢力下の海面でも作戦が可能である。元来軍艦の奇襲雷撃を目的としたが、第一次、第二次両世界大戦では通商破壊戦がもっとも有効な用途であった。現在は水中性能の向上と各種ミサイルの装備によりさらに艦船、陸上重要地攻撃に威力を増し、とくに原子力潜水艦は航空母艦とともに海軍艦艇のなかでもっとも重要な艦になっている。

[阿部安雄]

沿革

潜水艦の考えは古くからあったが、アメリカ独立戦争時の1776年にイギリス艦攻撃を試みて失敗したタートルTurtleが、実戦に使われた最初のものである。ついで南北戦争で南軍は各種の潜航艇を使用し、その一艇ハンリーHanleyが外装水雷で北軍軍艦を撃沈し、自らも沈没したが、これが初めて敵艦を沈めた潜水艦(艇)となった。当時の艇はまだ人力推進である。1880年代から20世紀初頭にかけて、攻撃兵器に魚雷の採用、空気不必要の水中航行を可能とする電池・電動機推進方式の考案、内燃機関および船体鋼材の発達、潜航中に海上を見る潜望鏡の実用化などの技術進歩により、潜水艦(艇)の開発が促進された。魚雷発射管を最初に装備した1885年完成のノルデンフェルトNordenfelt艇、初めて電池と電動機を動力源としたフランスのジムノトGymnote(1888年完成)などを経て、1898年アメリカのジョン・P・ホランドJohn P. Hollandが、単殻式船体にガソリン機関、蓄電池、発射管を装備した初の実用潜水艦(艇)ホランド(水中排水量74トン)を試作して成功を収め、1900年にアメリカ海軍に購入された。引き続きその改良型が建造され、同型艇が日本、イギリス、ロシアをはじめ広く各国で採用された。そのほか潜舵(せんだ)を考案したアメリカ人レイクLake、複殻式船体の考案者であるフランス造船官ローブーフLaubeuf、別方式の複殻式艇をつくったイタリア海軍技師ローレンチLaurentiなどが、初期の潜水艦開発に力を尽くした。初期の艦は水上速力と航洋性が貧弱で潜航能力も低く、おもに港湾防御や泊地襲撃に使われるにすぎなかったが、第一次世界大戦までに水上用航走ディーゼル機関の実用化、複殻式船体の採用、艦型増大などにより、航続力と航洋性が向上し、主として水上航走で作戦海面に進出し、会敵するや潜航して魚雷攻撃を行う艦が発達した。これを可潜艦submersibleと称し、第二次世界大戦末までこの型式がおもに発達した。これに対して、ほとんど潜航状態で行動するものを狭義の潜水艦submarineと称する。

 第一次世界大戦開始直後の1914年9月、ドイツの潜水艦(Uボート)U-9はイギリスの装甲巡洋艦3隻をたて続けに撃沈し、潜水艦の威力を実証した。この大戦でドイツ潜水艦は飛躍的な発達を遂げ、兵装、速力、航続力などの著しい向上と艦型増大とにより遠洋作戦が可能になった。当時各国とも軍艦を襲撃目標にしていたが、ドイツは潜水艦の建造に全力を傾注し、大戦中期以降は輸送船を目標とした通商破壊戦を実施して大きな効果を収め、潜水艦の新用法を開拓した。

 第二次世界大戦までの潜水艦は、いずれもドイツ艦の改良型で、根本的な改良点はなく、とくに水中の速力と航続力はほとんど向上がなかった。日本はワシントン海軍軍縮条約による主力艦の劣勢を補うため潜水艦の性能向上に努力を傾け、ドイツ潜水艦技術を基とした巡洋潜水艦を建造する一方、高出力複動ディーゼル機関の採用などにより海大(かいだい)型と称する艦隊作戦用水上高速潜水艦(水上速力20~23ノット)を多数建造して世界をリードし、第二次世界大戦直前には両型式の性能を兼ね備えた甲・乙・丙型とよばれる3種の大型水上高速潜水艦を建造するに至った。

 第二次世界大戦でドイツは国家の総力をあげて潜水艦の大規模建造を行い、ふたたび通商破壊戦を実施し、多数の艦が共同して輸送船団を夜間攻撃する狼群(ろうぐん)戦法により連合国に多大の被害を与えた。日本は高性能の潜水艦群を擁しながら、軍艦攻撃に固執したため損害のみ大きく、期待した成果があげられず、他方アメリカは対日戦で軍艦攻撃と通商破壊戦の両方に使用して著しい成果を収めた。連合国軍におけるレーダー、ソナー、対潜前投兵器、護衛空母、航空機、対潜水艦戦術などの発達により、1943年中ごろにドイツ潜水艦が制圧されるに及んで、水中航続力に乏しく頻繁な浮上充電を必要とする在来型可潜艦の作戦能力は急激に低下した。これに対しドイツは、ディーゼル機関の潜航運転を可能とするシュノーケル装置(換気装置)を採用するとともに、水中運動に適するよう改良した船型に大容量電池を多数搭載し、水中速力を12.5~16ノットに向上させ、水中航続力も増大した画期的な水中高速潜水艦の大量建造に着手し、日本も時期を同じくして同種艦の建造に踏み切ったが、いずれも終戦までに戦力化できなかった。

 第二次世界大戦後の潜水艦は、ドイツの技術を継承、発展させた水中高速型となり、その技術的改良および発達はおもにアメリカで行われた。船体形状は、大戦中の水上航走重視型から水中抵抗減少のため整流型になったが、1953年に完成したアメリカの実験潜水艦アルバコアーAlbacoreで試みられた涙滴tear-drop型船型は水中性能の著しい向上をもたらし、広く採用されるようになった。1954年アメリカで最初の原子力潜水艦ノーチラスNautilusが完成し、潜水艦は長期にわたり水中を高速航行しうる能力を獲得した。ついで原子力潜水艦に涙滴型船型を採用してさらに水中運動性能を増進させ、ここに真の潜水艦true-submarineが実現した。

[阿部安雄]

現在の潜水艦

各種ミサイル、ホーミング魚雷、ソナーなどの発達に対応し、1950年代後半から潜水艦は(1)弾道ミサイル潜水艦、(2)巡航ミサイル潜水艦、(3)攻撃潜水艦に分かれ発達して現在に至っている。

 (1)は核弾頭付き弾道ミサイルを搭載し海中から発射するもので、戦略核兵器体系の重要な柱とされ、アメリカ、ソ連(現在はロシア)、イギリス、フランス、中国、インドの6か国が建造した。一部の初期の艦以外はすべて原子力潜水艦で、1959年アメリカで完成したジョージ・ワシントン級George Washington Class(水中排水量6709トン、ポラリス16発)が最初のものである。以後、ミサイル、艦とも発達し、現在は射程8300~1万2000キロメートル級のミサイルを20~24基搭載する水中排水量1万8000~2万7000トンの艦がアメリカ、ロシアで就役している。イギリス、フランス、中国もごく少数の艦を保有し、インドは短射程の艦1隻を建造中である。

 (2)は従来ソ連のみに存在した艦種で、アメリカの空母機動部隊を主目標に、対艦巡航ミサイルを装備した艦で初期のものを除きすべて原子力推進艦である。1960年以来多数の艦が建造されたが、現在は射程550キロメートル級の対艦攻撃用巡航ミサイル24基装備の大型艦が主力になっている。冷戦終結後は対地攻撃任務が重視されるようになり、アメリカは一部の弾道ミサイル潜水艦を多数の戦略巡航ミサイル搭載艦に改造し、2006~2008年に再就役させた。

 (3)は潜水艦および水上艦船の攻撃を任務とするもので、原子力潜水艦とディーゼル機関・電池装備の通常動力潜水艦が使用されており、1970年代後期以降の建造艦は、探知・識別能力と静粛性が著しく向上した。アメリカ、ロシアはともに新式の原子力攻撃潜水艦に戦略巡航ミサイルを装備し、最近の攻撃潜水艦は巡航ミサイル潜水艦の機能を兼備する趨勢(すうせい)にある。

 通常動力潜水艦は、水中航続力と機動力が原子力潜水艦より劣るが、建造、維持費用が安価であり、優れた静粛性によりソナー探知能力が高くかつ敵に発見されにくい利点を有し、使用法によっては有効な働きが期待しうるため、広く各国で使用されている。日本の海上自衛隊も16隻保有し、最新の「そうりゅう」型(水中排水量4200トン、2009年完成)は、各国の同種艦中最大にして第一級の性能といわれている。

 ソ連の崩壊による冷戦終結により、大洋中での米ソ艦角逐に対応した潜水艦建造にかわって、局地戦争、低レベル紛争での対潜水艦戦が重視されるようになった。従来、潜水艦をもたなかった中小国や発展途上国が、ドイツ、フランス、ノルウェー、オランダ、スペイン、スウェーデン、ロシアなどから通常動力潜水艦を購入、装備するケースが急増(潜水艦脅威の拡散)しつつあることにより、前記戦争・紛争で潜水艦が使用される可能性が高まり、アメリカは最近、浅海域、沿岸域での作戦機能を考慮した原子力推進潜水艦を建造するようになった。

[阿部安雄]

原理と船体構造の特徴

浮上、潜航を行い、大きな水圧がかかる水中で三次元運動することが、他にみられぬ潜水艦の大きな特質である。船体は、最大潜航深度の水圧に耐える耐圧船殻(内殻)と、外側の非耐圧外板(外殻)の二重構造とし、その間を注排水用のバラストタンク類とした複殻式、耐圧部だけの一重構造で内部または前後の外部にバラストタンク類を設けた単殻式、両者の中間形態で耐圧部の外側に部分的に非耐圧外板を設け、この間をバラストタンク類とした半複殻式の3型式がある。耐圧部の外の前後にバラストタンク類を設けた単殻型は小型通常動力潜水艦に、複殻式は同中・大型艦に、改良された半複殻式は原子力潜水艦に採用されている。

 浮上・潜航は、バラストタンクへの注排水による浮力調整と、潜舵(せんだ)および横舵(おうだ)を用いて行われる。潜航のときは、まずバラストタンク底部の注水弁を開き船体上面がほぼ海面につかる状態とし、次にタンク頂部のベント弁を開いてタンク内に海水を満たし、船体の予備浮力をなくして潜航し、つり合いをとる。急速潜航の際は、負浮力タンクにも注水して浮力をマイナスの状態とし、潜・横舵により艦首を下げた姿勢で潜航する。浮上の場合は、潜・横舵により頭上げの姿勢で海面に近づき、ベント弁を閉じたまま注水弁を開き高圧空気でタンクから海水を排水して浮力を増し、浮上後ベント弁を開いてタンク上部の空気を逃がす。水中で三次元運動をするため、旋回用の縦舵のほかに、上下方向の操艦用に2組の水平舵をもつ。艦首部のものを潜舵、艦尾部のものを横舵というが、涙滴型船型の艦では潜舵を艦橋構造物の両側に設けるものもある。潜航時に、潜・横舵とも俯角(ふかく)とし船体をほぼ水平に保ってゆっくり潜水する場合と、潜舵に俯角、横舵に仰角をかけ、速力をあげて急速潜航する場合とがある。近年は水中運動性向上のため、艦尾部の横舵と縦舵を統合したX舵を採用した艦が建造されている。

 耐圧船殻は強度を確保するためおおむね円筒形または円錐(えんすい)台形を主体とした形状である。最大安全潜航深度は、構造強度理論の進歩と材料の改良により逐次増加し、第一次世界大戦時は40~60メートル、第二次世界大戦時は80~120メートルになった。戦後、調質高張力鋼と溶接技術の発達により、1960年ごろの200~300メートルを経て、現在は500メートル程度になっているが、アメリカの最新艦バージニア級Virginia Class(水中排水量7800トン、2004年就役)は600メートルである。ソ連(現在はロシア)は、チタン合金を使用して潜航深度700メートルを可能としたアルファ級Alfa Class(水中排水量3600トン)を1970年に完成し、続くシエラ級Sierra Class(水中排水量1万0100トン、1984完成)では750メートルである。

[阿部安雄]

動力と性能

19世紀末に建造された初期の潜水艦は、水上動力にガソリン機関または石油機関、水中動力に蓄電池を使用した。1904年フランスがディーゼル機関を搭載した艦を完成し、以後、潜水艦の水上機関にはディーゼル機関が使用された。ディーゼル機関の発達などにより、第一次世界大戦直前から潜水艦(可潜艦)の水上航走性能は逐次増進し、第二次世界大戦までに艦型は1500~2000トンに大型化し、水上艦に比して著しく長大な航続力を達成するとともに、水上速力は16~20ノットとなり、日本では23ノットを超す艦も出現した。他方、水中の運動力と航続力はほとんど発達がみられず、第一次世界大戦中から第二次世界大戦中まで最大速力は8ノットで、航続力は8ノットで約1時間、3ノットで20~40時間程度という貧弱な性能にとどまっていた。これは、2種動力装置の搭載とともに潜水艦の重大な弱点とみなされ、水上・水中で使用可能な単一機関の実用化が望まれた。第二次世界大戦中にドイツはシュノーケル装置を採用して、潜航中でも空気を取り入れディーゼル機関の運転を可能とし、さらに抜本策として過酸化水素を助燃剤として外部から空気を取り入れずに運転しうるワルター・タービンを開発し、これを主機とする実用艦の量産に着手したが、完成前に終戦となった。戦後、ソ連が若干隻を建造し、イギリスも実験艦2隻を試作したが、原子力潜水艦の出現により、それ以上の発展はしなかった。

 原子力推進機関は空気を必要とせず、1回の燃料補給で長時間運転可能な利点が潜水艦に最適とされ、第二次世界大戦後アメリカが開発を行い、1954年就役のノーチラスで実用化に成功した。これにより潜水艦は、ホランド艇の誕生から50年余にして水中性能の飛躍的向上を達成するに至った。現在の原子力潜水艦は加圧水型原子炉を装備し、おおむね35ノット程度の速力で長時間水中航走しうる能力を有する(ロシアのアルファ級は42ノット)。

 通常動力潜水艦も、水中での速力増大、航続力増進、静粛性向上のために、大容量電池と電動機、転換器付き交流発電機、高出力過給ディーゼル機関、防振装置などの開発が進み、最大水中速力20ノット、シュノーケル使用時の航続距離が8ノットで1万2000海里、水中航続力が数ノットで100時間程度の性能で、きわめて静かな艦が出現した。さらに、通常動力潜水艦の水中行動持続力を増大するため、1980年ごろから各国において運転に艦外の空気を必要としない非大気依存推進(AIP=air independent propulsion)システムの研究開発が進められている。AIPは従来のディーゼル・電気動力機関の代替ではなく、これを補完するもので、スターリング機関、燃料電池、クローズド・サイクル・ディーゼル機関、外燃タービン発電機関(MESNA)などが代表的な方式である。AIPを実用化した最初の艦は、1996年に就役したスウェーデンのゴトランド級Gotland Classで、スターリング機関を搭載している。これに続くものはドイツのU31型(212A型)で、燃料電池を装備、2005年就役した。2007年には韓国でAIP装備潜水艦ソン・ウォンイルが就役、日本でも「そうりゅう」型がAIPを装備した。AIP装備艦は、浮上航走(シュノーケル航走を含む)時はディーゼル機関、水中待機時はAIP、水中でのダッシュ時は蓄電池の電力をそれぞれ使用し、現在のところ水中行動持続力は5ノットで1か月程度と伝えられている。

[阿部安雄]

『『世界の艦船増刊第18集 潜水艦 今と昔』(1985・海人社)』『堀元美著『潜水艦』(1987・原書房)』『堀元美・江畑謙介著『新・現代の軍艦』(1987・原書房)』『リチャード・ハンブル著『第二次大戦の潜水艦』(1993・三省堂)』『トム・クランシー著『トム・クランシーの原潜解剖』(1996・新潮社)』『『世界の艦船第505号 特集 潜水艦』(1996・海人社)』『『世界の艦船第547号 特集 潜水艦のすべて』(1999・海人社)』『坂本明著『大図解 世界の潜水艦』(1999・グリーンアロー出版社)』『『現代の潜水艦』(2001・学習研究社)』『デーヴィド・ミラー著『世界の潜水艦』(2002・学習研究社)』『『世界の艦船増刊第68集 世界の潜水艦』(2005・海人社)』『『福井静夫著作集9 日本潜水艦物語』(2009・光人社)』『『世界の艦船第719号 特集 原子力潜水艦』(2010・海人社)』『Stephen SaundersJane's Fighting Ships 2010-2011(2010, Jane's Information Group)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「潜水艦」の意味・わかりやすい解説

潜水艦【せんすいかん】

海中に全潜航して戦闘を行う軍艦。19世紀末ごろから各国海軍に実験的に導入されたが,実用化はディーゼル機関の発達以後で,ディーゼル機関で水上航走し,蓄電池で潜航。第1次大戦では特にドイツのUボート魚雷攻撃により通商を破壊するなどして多大の戦果をあげた。第2次大戦でも艦船攻撃のほか,機雷敷設,哨戒(しょうかい),隠密輸送などの任務に当たり,大戦末期にはスノーケル潜水艦が出現,兵装もホーミング魚雷が採用された。戦後も電池の改良などにより水中の航続性・高速性が向上し,ミサイル装備のものも現れた。しかし潜水艦の概念を一変させる大変革は原子力潜水艦の開発で,原潜は航空母艦と並び海戦の主力の地位を占めるに至った。日本の海上自衛隊は,1999年現在潜水艦16隻を保有,代表的新鋭艦〈おやしお〉型は基準排水量2750トン,最大速力20ノット,魚雷発射管をもつ。潜水艦は水中の強大な水圧に耐えるため,船体を紡錘形とし,断面は円形またはその組合せとする。→対潜哨戒機対潜兵器
→関連項目艦艇警備艦潜水母艦潜望鏡爆雷防潜網補助艦艇

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潜水艦」の意味・わかりやすい解説

潜水艦
せんすいかん
submarine

水中を潜航できる軍艦。水中から発射できる魚雷,ミサイルなどをおもな武器とする。初めて潜航艇を建造したのはオランダの発明家 C.ドレバルで,木造艇を獣皮で包み,オールで推進,1620~24年に数回,テムズ川で水面下ほぼ 3mの潜航に成功した。 1747年のイギリスの"Gentleman's Magazine"は山羊皮の袋を潜航艇につけ,沈むときは水を入れ,浮上するときは空気を吹込んで水を抜くことを提案したが,今日でも潜水艦はこのバラスト・タンクの原理で潜航,浮上する。初めて戦闘に使われた潜航艇は,76年アメリカ独立戦争中,ニューヨーク港でイギリス軍艦を攻撃した独立軍の『タートル』である。その後,蒸気,圧縮空気,電気を使って推進する潜水艦が造られるようになった。近代潜水艦の父といわれる J.ホランドは,水上航行にガソリン・エンジンを用い,潜水中は電力を利用する本格的な潜水艦を建造,1900年アメリカ海軍はこれを『ホランド』と命名して制式採用した。潜水艦は第1次世界大戦前には,実戦用兵器として一応完成した。開戦前に,ドイツ海軍はディーゼル機関を採用し,各国も危険なガソリン機関を捨て,これにならった。次の大きな改良は,第2次世界大戦後期にドイツ海軍が実用化したシュノーケル装置である。それまでは充電のために浮上しなければならなかったのが,半永久的な潜航が可能となった。 55年には世界最初の原子力潜水艦『ノーチラス』が登場し,60年にポラリス潜水艦が現れると,潜水艦は航空母艦とともに最も重要な軍艦となった。国際法上潜水艦は,軍艦の一種で軍艦と同様に扱われるほか,特に外国の領海を航行するときは特に許されていないかぎり海面上を航行し,その国旗を掲げることを要求される。また戦時に捕獲権を行使する潜水艦は海面上に浮上して,臨検・捜索の手続をとることが要求されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「潜水艦」の解説

潜水艦
せんすいかん

水面下で行動可能な戦闘用艦艇。主兵器は近代では魚雷,現代ではミサイルで,偵察・監視・攻撃・機雷敷設・輸送などの任務に従う。日本海軍では規準排水量1000トン以上を伊号(いごう),以下を呂号(ろごう),さらに500トン未満を波号(はごう)と区別した。艦体に水圧に耐える内殻とその外側の外殻があり,中間のスペースに海水を注入・排水して潜没・浮上する。在来型潜水艦の水中航走に蓄電池電力を使用する欠点をなくしたのが,原子力潜水艦である。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の潜水艦の言及

【海軍】より

…一般に軍備は陸・海・空の3軍に大別されるが,海軍の使命,編成,戦略は時代と国家形態に応じて変化した。初期の海軍は水上に乗り出す小武装団にすぎなかったが,今日では,広く水上・水中を活動舞台とする直接の戦闘部隊(艦船,航空機,潜水艦,海兵隊など)のほか,その統率や管理,維持のための組織と施設(官庁,工廠(こうしよう),基地,防備隊,病院,学校など)が含まれる。海軍の使命は元来,国家が必要とする海洋を制して,海を自国のために利用し敵側に利用させないこと,いわゆる制海権の獲得を目標とし,艦艇中心の戦闘部隊として独自に発達してきた。…

※「潜水艦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android