高性能レーダーを搭載し、探知した敵の航空機やミサイルなどの情報を大型コンピューターで瞬時に処理して多数の目標に同時対処できる能力を持つ艦艇。名前の「イージス」はギリシャ神話で女神アテナの防具に由来する。日米が共同開発した改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」も搭載する予定で、米国主導のミサイル防衛網の中核を占める。米軍は横須賀基地(神奈川県横須賀市)にも配備。米国で開発され、海上自衛隊も7隻を保有する。(ワシントン共同)
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航空機とミサイルの同時多数攻撃に対応するイージス・システムAegis Systemを装備した艦艇のこと。1963年アメリカの国防長官マクナマラは、艦艇用ミサイルシステム(ASMS=Advanced Surface Missile System)を承認し、それに伴い、米海軍は1983年に最初のイージス艦を就役させた。イージス艦は約200目標の同時追尾ができるフェーズド・アレイ・レーダー(位相配列レーダー)を装備し、武器管制システムはコンピュータで統制されており、目標探知、ミサイル発射および結果の評価は自動的に行われる。前後甲板の垂直発射装置(VLS=Vertical Launching System)には射程約70キロメートルのセミアクティブ・レーダー・ホーミング艦対空ミサイルが搭載されており、在来艦の4倍以上の16または18の目標を同時に攻撃可能であるといわれている。VLSには射程約9キロメートルの対潜ロケット(ASROC=Anti-Submarine Rocket)や巡航ミサイルも装填(そうてん)することができる。その他、発射速度毎分3000発の6砲身ガトリング砲が、近接防御火器システム(CIWS=Close in Weapon System)として搭載されているほか、射程約15キロメートルの5インチ砲、射程100キロメートルを超える艦対艦ミサイルも搭載されている。防衛庁(現防衛省)は洋上防空体制の中枢を担うものとして1987年(昭和62)に導入を決定。システムを輸入し、国産護衛艦に搭載されることになり、1993年(平成5)3月、その一番艦「こんごう」(7250トン)が竣工した。2010年(平成22)時点で「こんごう」型イージス艦4隻(「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」)、「あたご」型イージス艦(7750トン)2隻(「あたご」「あしがら」)が配備されている。また、2007年12月には、「こんごう」に搭載されたスタンダード・ミサイル(SM-3)の発射実験がハワイのカウアイ島沖で行われ、高度100キロメートル以上の大気圏外を飛行する標的ミサイル1発の迎撃に成功した。2008年11月には、「ちょうかい」がカウアイ島沖でSM-3の発射試験を行ったが、SM-3の弾頭部分の不具合により標的ミサイルには命中しなかったものの、BMD(弾道ミサイル防衛)システムが正常に作動していることが確認された。2009年10月には、「みょうこう」が弾道ミサイル迎撃実験を行い、事前通知のない条件下で標的ミサイルの捕捉・追尾・迎撃に成功している。2010年末時点で、イージス艦は米海軍および海上自衛隊のほか、韓国、ノルウェー、スペインの各海軍により運用されている。なお、イージスとはギリシア神話に登場する戦争の女神アテナの盾である。
[村井友秀]
『金田秀昭著『ミリタリー選書27 BMD<弾道ミサイル防衛>がわかる――突如襲い来る弾道ミサイルの脅威に対抗せよ』(2008・イカロス出版)』▽『柿谷哲也著『イージス艦はなぜ最強の盾といわれるのか――圧倒的な防空能力をもつ戦闘艦の秘密』(サイエンス・アイ新書・ソフトバンククリエイティブ)』
(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)
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