後妻打(読み)うわなりうち

精選版 日本国語大辞典 「後妻打」の意味・読み・例文・類語

うわなり‐うち うはなり‥【後妻打】

〘名〙
前妻(こなみ)後妻(うわなり)を嫉妬して打ちたたくこと。
御堂関白記‐長和元年(1012)二月二五日「仍以家業日記、是蔵云女方宇波成打云々」
※謡曲・葵上(1435頃)「六条の御息所ほどの御身にて、後妻打(うわなりう)ちの御振舞ひ」
② 室町時代から江戸期にかけての民間習俗。夫が後妻をめとったとき、離別された先妻がその親しい女たちをたのみ、使者をたてて予告し、後妻の家を襲い、家財などを打ちあらさせたこと。相当打ち。騒動打ち。
咄本狂歌咄(1672)二「女房のうはなりうちをなむしけるを見てよみける」
葉隠(1716頃)三「直茂公最前の御前様、御離別以後、うわなり打におりおり御出候へども」
③ 女の怨霊(おんりょう)
[語誌](1)平安時代は①に挙げた「御堂関白記」にみえるように貴族の習俗であった。中世になると、歌謡・能・狂言といった世界に見え、この習俗が民衆に広まっていたことがわかる。
(2)離別後他に嫁した鍋島直茂公の前妻によるウワナリウチが度々行なわれ、その折の後妻の対応が世間の取り沙汰となったという②の「葉隠」の事例は、参加・見物する者にとっての娯楽的性格が強かったことを示す。ウワナリ神事も、その一種と位置づけられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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