後妻打ち(読み)ウワナリウチ

デジタル大辞泉 「後妻打ち」の意味・読み・例文・類語

うわなり‐うち〔うはなり‐〕【後妻打ち】

本妻後妻うわなりを嫉妬して打ちたたくこと。
「あらあさましや六条御息所ろくでうのみやすどころほどの御身にて、―の御振る舞ひ」〈謡・葵上
室町時代離縁になった先妻後妻をねたんで、親しい女たちと隊を組み、後妻の家に行って乱暴を働く風習。相当打ち。騒動打ち

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改訂新版 世界大百科事典 「後妻打ち」の意味・わかりやすい解説

後妻打ち (うわなりうち)

前妻が親しい女たちをかたらって後妻を襲い,家財などを打ちこわしらんぼうをはたらくこと。うわなりとは,古語で前妻を意味する〈こなみ〉に対する後妻,次妻に相当し,また第二夫人,妾を指すことも多い。一般に刃物は用いず棒や竹刀で互いに打ち合うとされる。平安時代にもみられるが,室町時代に多く行われたとされ《昔々物語》《骨董集(こつとうしゆう)》などには,主に武士や町方における行為が記されている。一人の男性をめぐる複数女性間の対立,嫉妬に由来するわけであるが,これは夫の一時的訪婚をともなう婚姻形態(聟入婚)と関連すると考えられる。しかし現行民俗による聟入婚の存在形態からは,このような後妻打ちが農村慣習としてあったとは考えにくい。後妻打ちの行為をもって神々の葛藤をなぞらえた後妻神事もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「後妻打ち」の意味・わかりやすい解説

後妻打ち
うわなりうち

主として平安時代の末から戦国時代頃まで行われた習俗で,離縁になった前妻 (こなみ) が後妻 (うわなり) にいやがらせをする行動をいう。女性が別れた夫の寵愛をほしいままにしている新しい妻をねたむあまり,憤慨してその同志的な婦人らとともに後妻のところへ押寄せていくこと。一方,後妻のほうでも,その仲間の女性たちを集めて応戦した。武器としてはほうきすりこぎなどの家庭用の道具が用いられた。

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