内科学 第10版 「心アミロイドーシス」の解説
心アミロイドーシス(その他の心筋症)
概念・病態生理
アミロイドーシスは原発性,続発性のいずれも心病変を合併する.アミロイドの沈着が広範囲に及ぶまで臨床症状を呈することはない.発症は男性に多く,通常30歳代以降である.いったん発症すると予後は不良である.沈着するアミロイド線維により分類される.トランスサイレチン(TTR)を前駆体とする家族性アミロイドーシスは常染色体性優性遺伝疾患であり,死因となるのは約半数の症例で不整脈や心不全である.免疫グロブリン性(ALアミロイドーシス)も心臓に沈着することが多い.慢性炎症や透析によるAAアミロイドーシスでは心臓沈着の頻度は低い.
臨床症状
臨床像は拘束型心筋症に類似する.右心不全症状が主体となる.病期が進むと収縮不全がみられ,左心不全症状を呈する.起立性低血圧や徐脈性・頻脈性不整脈によるめまい,失神を認める症例も多い.伝導障害を認める.身体所見上は頸静脈波で急峻なy谷を認め,Ⅲ音,房室弁逆流による収縮期雑音を聴取する.
検査成績・鑑別診断
心電図では異常Q波,房室ブロック,軸偏位,洞徐脈,低電位差,種々の頻脈性不整脈などの非特異的異常所見がみられる(図5-13-22).心エコーが診断上最も有用である.左室の壁厚増大がみられ,特に壁内に顆粒状の輝度増加(granular sparkling)がみられる(図5-13-22).拡張性が低下しており,心房拡大,弁肥厚,心膜液貯留を認める.心臓カテーテル検査では拡張性の低下を反映して左室拡張期圧の低下,dip and plateauパターンを認める.確定診断は,心筋生検によるアミロイド沈着の証明である(図5-13-22).全身的なアミロイドーシスがあり,心エコーで特徴的な変化を認めれば臨床的に心アミロイドーシスと診断される. 鑑別診断は,拘束型心筋症,ほかの代謝性疾患に伴う二次性心筋症,収縮性心膜炎,虚血性心疾患などである.予後は不良である.治療は対症療法に限られ,利尿薬,抗不整脈薬の投与,ペースメーカや植え込み型除細動器が使用される.ALアミロイドーシスでは免疫グロブリンの産生を抑制する化学療法や自家末梢血幹細胞移植も試みられるが,効果は限定的である.[磯部光章]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報