内科学 第10版 「心房中隔欠損」の解説
心房中隔欠損(非チアノーゼ性心疾患)
疫学
ACHD患者の中で頻度が高い(30~40%).最近は定期検診時に心雑音や心電図異常で早期に発見されるが,無症状で成人期を迎える場合もある.
中隔欠損部位により4つに分類(二次口欠損,一次口欠損,静脈洞欠損と冠静脈洞欠損)されるが,成人でみられる心房中隔欠損のほとんどが二次口欠損である.左右短絡(肺体血流比;Qp/Qs)により,右心系(右心房,右心室,肺動脈)は拡大する.長期間にわたる左右短絡増加は肺血管閉塞性病変を進行させ肺高血圧(pulmonary hypertension:PH)が出現する.著明に肺血管抵抗が上昇した場合は高度(体血圧と同等以上)のPHを呈し,ASDを介した右左短絡が生じ(Eisenmenger症候群),Qp/Qs <1.0となり重症となる.また,成人期には僧帽弁疾患や高血圧を合併し左心房圧が上昇した場合,左右短絡が増大し,右心不全,三尖弁閉鎖不全を呈する場合がある.
臨床症状
成人期に至るまで症状を自覚しない場合が多い.心不全症状のほかに長期的な右心房拡大の結果,心房粗動や心房細動などの上室性不整脈を合併すれば動悸を自覚する.
検査成績・診断
左右短絡により右心系の拡大を示す. PHが疑われる場合は,心臓カテーテル検査がその診断,治療効果,外科/カテーテルASD閉鎖の適応決定に有用である.
経過・予後
25歳未満で手術した場合,その生命予後は一般人と差はないが,手術年齢が高く(41歳以上),PHを合併した場合その予後は悪い.高年齢では心房粗動や細動を合併し,術後も半数以上に不整脈は持続し,脳塞栓などの中枢神経合併症も増加する. [大内秀雄]
■文献
Nakazawa M, Shinohara T, et al: Study Group for Arrhythmias Long-Term After Surgery for Congenital Heart Disease: ALTAS-CHD study. Arrhythmias late after repair of tetralogy of fallot: a Japanese Multicenter Study. Circ J, 68: 126-130, 2004.
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報