脳塞栓(読み)のうそくせん

精選版 日本国語大辞典 「脳塞栓」の意味・読み・例文・類語

のう‐そくせん ナウ‥【脳塞栓】

〘名〙 血液中を有形成分が流れて、脳の細い動脈につまり、その部に脳軟化症を起こしたもの。心臓弁膜症動脈硬化症に多く、有形成分としては血液の凝固したもの(血栓)や、動脈壁の脂肪塊が多い。脳卒中のような症状を突然に起こす。脳栓塞

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デジタル大辞泉 「脳塞栓」の意味・読み・例文・類語

のう‐そくせん〔ナウ‐〕【脳塞栓】

心臓にできた血栓や、まれには脂肪・腫瘍しゅよう細胞などの塊が流れてきて、脳の動脈に詰まる疾患。症状は脳血栓と同様で、突発的に起こることが多い。脳塞栓症。→脳梗塞

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳塞栓」の意味・わかりやすい解説

脳塞栓
のうそくせん

脳動脈の閉塞によっておこる局所的な脳壊死(えし)を脳梗塞(こうそく)(脳軟化)というが、そのうち、脳血管壁の病変に関連する脳血栓とは異なり、他の部位から脳動脈へ流入してきた異物塞栓)によって閉塞した場合を脳塞栓という。栓子としては血栓が多く、臨床症状あるいは剖検所見からも脳血栓と区別できないことがしばしばある。脳塞栓の成因は心臓疾患によることが多く、心房細動や僧帽弁狭窄(きょうさく)症、あるいは両者の合併、心筋梗塞などが基礎疾患となる。そのほか、頸部(けいぶ)動脈のアテローム硬化を基盤として生じた血栓が脳に運ばれて脳血管を閉塞する場合もある。

 症状の特徴を列記すると、〔1〕急激に発症する。脳血栓とは異なり発病が急で、数秒あるいは2、3分で神経症状が発症し、進展完了する。〔2〕ほとんどの場合、前駆症状はない。〔3〕軽症の場合も比較的多いが、重症となる場合もある。内頸動脈や中大脳動脈のような太い血管に栓子が詰まったときは脳浮腫(ふしゅ)も著明で、意識障害が出現する。また急性期には、しばしば再開通現象(栓子が一度詰まって、これが溶解して血流が再開すること)により脳浮腫が助長されることがある。再開通例には、しばしば出血性梗塞が出現する。〔4〕腰椎穿刺(ようついせんし)で採取した髄液は清澄の場合が多いが、出血性梗塞のときはキサントクロミー(黄色調)あるいは血性となることもある。〔5〕脳に塞栓をおこすばかりでなく、他臓器(脾(ひ)、腎(じん)、四肢、腸、肺)に塞栓をおこすこともある。〔6〕年齢に関係なく発病し、また再発作をおこしやすい。

 治療としては、脳浮腫に対し脳圧下降剤(マニトール、グリセロールなど)を投与する。なお、血栓溶解剤は出血性梗塞をおこすおそれがあるので通常使用していない。

[荒木五郎]

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百科事典マイペディア 「脳塞栓」の意味・わかりやすい解説

脳塞栓【のうそくせん】

脳栓塞とも。心臓弁膜症・心臓内膜炎などで生じた血栓のほか,細菌や脂肪の塊,癌組織の一部,空気などが脳血管を閉塞することによって起こる疾患。脳梗塞(こうそく)の原因となる。脳卒中発作を起こすが,意識障害の深さ・持続は閉塞部位により異なり,一般に脳溢血(いっけつ)に比して軽症。治療は脳溢血に準ずる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脳塞栓」の意味・わかりやすい解説

脳塞栓
のうそくせん
cerebral embolism

脳栓塞ともいう。脳卒中の一つ。心臓などに形成された血栓がはがれて移動し,脳の動脈枝が閉塞するために起るものをいう。症状は脳出血と同じように,突然,意識障害や片側の麻痺などを起すが,一般に症状はやや軽く,比較的短期間に回復する。原因としては僧帽弁,大動脈弁などの弁膜症,リウマチ性または細菌性の心内膜炎,梅毒などのほか,腫瘍性細胞塞栓症,脂肪塞栓症などもある。年齢,高血圧とは関係なしに発症することがある。原因に応じた治療を必要とする。

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生活習慣病用語辞典 「脳塞栓」の解説

脳塞栓

脳梗塞の 1 つで、心臓や首の動脈などにできた血栓が、脳の血管に流れてきて、動脈を詰まらせてしまう病気です。

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栄養・生化学辞典 「脳塞栓」の解説

脳塞栓

 脳以外で生じた血栓が脳の血管を塞ぎ,血流を止める症状.

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