心房中隔欠損症(読み)しんぼうちゅうかくけっそんしょう(英語表記)atrial septal defect

  • (循環器の病気)
  • しんぼうちゅうかくけっそんしょう〔シンバウチユウカクケツソンシヤウ〕
  • 心房中隔欠損症(先天性心疾患)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

心房中隔の形成異常で,心室中隔欠損症同様,きわめて頻度の高い先天性心疾患乳児期に症状を呈することは少いが,成長とともに血流の短絡が増加すると,しばしば発育障害の原因となる。幼小児期では上気道感染を起しやすい。運動時呼吸困難,心悸亢進も認められるようになる。成人ではうっ血性心不全,発作性頻脈や心房細動などの不整脈肺高血圧を合併することがあり,平均寿命は 40歳代といわれている。欠損部を閉鎖する手術はきわめて安全なので,症状のある年長者の治療に行われるほか,就学期前後の小児に予防的に行われることもある。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

心臓の左右の心房のにある壁にがある、生まれつきの病気。全身に送られるはずの左心房の血液の一部が右心房に流れ込み、右心室を経て再びに入る。常に肺に負担がかかり、20代、30代と年齢を重ねるうちに息切れ倦怠(けんたい)感などの症状が出る。外科治療とカテーテル治療がある。

(2012-07-07 朝日新聞 朝刊 1社会)

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百科事典マイペディアの解説

右心房と左心房の間にある心房中隔に欠損口があるもの。先天性心臓病のなかでは,一番頻度(ひんど)が高い。左心房から右心房へ酸素化された血液が直接流れ込み,それだけ肺血流量が増加するため動悸,息切れなどが起こる。欠損口は自然に閉じることはないが,手術による治療は比較的容易な例が多い。
→関連項目心臓外科

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内科学 第10版の解説

定義・概念
 二次中隔の形成不全もしくは一次中隔の過剰吸収のため二次が閉鎖されないことによりに生じる(図5-8-3A).一次中隔の形成不全による一次孔欠損は房室中隔欠損症に含まれる.また,卵円孔開存は心房中隔欠損症には含めない.一般に左房圧が右房圧より高いので短絡血流は左房から右房に流れ,左→右短絡を生じるため右心系の容量負荷が起こる(図5-8-3B).ただし新生児期には右室壁が相対的に厚く伸展性(コンプライアンス)が低いために有意な短絡血流は生じず,発育とともに肺血管抵抗が減少し右室のコンプライアンスが高くなると左→右短絡が出現し,加齢とともに左心室のコンプライアンスが低下するとさらに左→右短絡が増加する.
自覚症状
 幼少時は有意な短絡血流がないため無症状で,学童期の健診などで発見されることが多い.加齢に伴って左→右短絡が増加すると,右心系の容量負荷が増大し,労作時息切れや易疲労感などの症状がみられるようになる.心房細動の合併もよくみられる.
身体所見
 聴診所見として,①Ⅱpの亢進とⅡ音の固定性分裂(肺動脈血流量の増加による),②肺動脈領域収縮期雑音(相対的肺動脈弁狭窄による),③三尖弁領域の拡張期雑音(相対的三尖弁狭窄による)がみられる.心房間圧較差は小さく短絡血流による乱流は生じないので,短絡血流による心雑音はきかれない.
検査
成績
 心電図では右軸偏位,不完全右脚ブロックを認める.胸部X線写真では右第2弓(右房)突出,肺動脈拡大,肺血管陰影の増強などがみられる.心エコーでは,右心系の容量負荷を反映する所見として右房・右室の拡大,心室中隔奇異性運動などがみられ(図5-8-4A),カラードプラ法で心房間短絡血流がみられる(図5-8-4B).
治療方針
 肺体血流比(Qp/Qs)2.0以上で肺血管抵抗が低く保たれている場合は欠損孔閉鎖術(外科手術もしくはカテーテルによる閉鎖術)を行う.肺体血流比1.5~2.0の場合は自覚症状やその他の合併症の有無などから判断する.カテーテル閉鎖術の場合は,肺体血流比以外にも欠損孔の形状や周囲組織との位置関係なども適応決定にあたり考慮する必要がある.肺高血圧が進行し右→左短絡が生じている(Eisenmenger化)場合は閉鎖術の適応はない.[塩島一朗]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 心臓には右心房(うしんぼう)右心室(うしんしつ)左心房(さしんぼう)左心室(さしんしつ)という4つの部屋があります。本症は、右心房と左心房の間を隔てている心房中隔という壁に生まれつき(あな)が開いている病気です(図13)。

原因は何か

 胎児期の初めに心臓ができる時、心房中隔は心房の上下の壁から発育してきて、生まれた時には孔は閉じているのが普通ですが、これが閉鎖しないままの状態がこの病気です。

症状の現れ方

 普通、10代では無症状です。しかし、手術をしないでそのまま年齢を重ねると20代後半~30代にかけて症状が現れてきます。

 最初の症状は、動いたあとの息切れや疲れやすさなどで、そのうちに心房細動(しんぼうさいどう)などの不整脈や、むくみ(浮腫)や動悸(どうき)などの症状が次第に強くなってきます。

検査と診断

 聴診器で聴診するだけでもわかることもありますが、まだ無症状の時期に健診などで早期に発見するには心エコー検査が極めて有力です。断層心エコーで心房中隔を示す箇所に断裂像が認められます。これが欠損孔を意味します。カラードプラー法を併用すると、この欠損孔をとおって左心房から右心房へと血流が短絡する様子が観察されます。

 学校健診などでは、心電図の不完全右脚ブロックの所見と聴診所見を併せて本疾患が疑われる人を絞り込み、心エコー検査で確定診断をします。

治療の方法

 手術による治療法とカテーテル治療法があります。手術では人工心肺を用いて開心術を行い、直視下に孔を縫って閉鎖します。

 カテーテル治療(カテーテルを用いた閉鎖術)とは大腿(もも)の血管から心房まで閉鎖器具を装着したカテーテル(細いチューブ)を入れ、そのカテーテルを右心房から心房中隔欠損の孔をへて左心房にまでとおし、最初に左心房のなかで円盤を広げ、次にカテーテルを引き抜いて右心房で2個目の円盤を広げ、2つの円盤で心房中隔をはさむようにして器具を固定することで孔を閉じる方法です。うまく留置できたあとは閉鎖器具からカテーテルを切り離して大腿部から抜き、止血して終了です。この方法では胸に手術創はつかないのですが、心臓の中に留置した器具の長期予後についてはいまだ明らかではありません。

病気に気づいたらどうする

 本症が診断された場合には、信頼できる循環器の専門医に相談することです。心房中隔欠損症でも乳児期に見つかった孔で非常に小さい場合には、2歳までに自然に閉じることもあります。しかし、直径8㎜以上の孔は普通、自然には閉じません。心臓の負担の程度を踏まえたうえで、手術またはカテーテル治療を行って閉じることがすすめられます。

関連項目

 カテーテルによる治療(コラム)

里見 元義


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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