急性ポルフィリン症

内科学 第10版の解説

急性ポルフィリン症(ポルフィリン症)

(1)急性ポルフィリン症(acute porphyria)
臨床症状
急性腹症を思わせる腹部症状が初期にみられ,後に,ヒステリーを思わせるような精神症状を呈し,最後には四肢麻痺,球麻痺などの神経症状を呈し,死に至ることもある急性発作がみられる.これら症状に特異的なものはないが,病状が進行に伴い多彩に変化することが特徴的である.腹部症状に対応する器質的な異常は認められず,神経系の機能的異常によるものと考えられている.よくみられる症状は以下のとおり,悪心,嘔吐,便秘,下痢,腹部膨満,腸閉塞,尿閉,失禁,排尿異常,頻脈,高血圧,発熱,発汗過多.非発作時(間欠期)には無症状であるが,HCPおよびVPでは,光線過敏性皮膚炎がみられることもある.検査成績 尿はときに特有のぶどう酒色を呈し(ポルフィリン尿),また,尿ポルフィリンは強陽性である.しかし,ADPやAIPではポルフィリンはあまり増加せず褐色調にとどまることが多い.尿中のPBGの増加を定性的に調べる検査であるWatson-Schwartz法ではADP以外では陽性になる.BUN,血清クレアチニンの軽度の増加,尿蛋白,尿糖もみられ,約半数例で乏尿,高比重尿がみられる.軽度の黄疸,AST,ALT,ALP,γ-GTPの中等度の増加,ChEの低下などがあり,肝炎と誤られることがある.低ナトリウム血症,低クロール血症が半数以上にみられ,SIADHによるとされる.糖代謝異常(高血糖)はほぼ全例にある.その他,種々の検査異常がみられる:血清総蛋白,アルブミンの減少,乳酸,ピルビン酸,γ-グロブリン,β-グロブリン,コレステロール,中性脂肪,種々ホルモン(ADH,GH,PRL,ACTH,コルチゾール,カテコールアミン)の高値.脳波は基礎波の不規則性と徐波化が多い.筋電図では線維性攣縮やgiant spike,spikeの脱落など,進展例では低電位がみられる.脳のMRIでは虚血性変化やlaminar necrosisが認められる.胃腸の検査では一過性に腸痙攣がみられるが,大半は腸麻痺の所見を示す.診断・鑑別診断 へム合成経路の酵素活性の低下はその酵素による反応部位より上流の基質の増加と最終産物であるヘムの低下を引き起こす.したがって,本経路の基質や代謝産物を測定することにより,酵素異常の部位がわかる.臨床症状,検査値などを含め総合的に診断することが必要だが,検査値で考えると図13-6-2に示したフローチャートに従って検査を進めるとよい.
各病型の特徴
1)急性間欠性ポルフィリン症(AIP)
20~40歳の女性に多く,急性症状のみを呈する.緩解期でも尿のPBGが高値を示すことが多く診断に役立つ.糞便ポルフィリンは増加しない.
2)多様性ポルフィリン症(VP)
皮膚症状も伴うことが多い.急性症状は女性で多いが,皮膚症状は男性に多い.発症期に増加した尿PBGは完解期には正常となるが,糞便PP(プロトポルフィリン)とCP(コプロポルフィリン)は持続的に高値を示す.
3)遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)
急性症状が主であるが,ときに皮膚症状も伴う.糞便PPは発症期でも増加しないが,糞便CPは持続的に高値を示す.
4)ALA脱水酵素欠損ポルフィリン症(ADP)
急性症状のみを呈する.尿のALAが著増するが,PBGは増加しない.ALADのホモ異常が病因で,これまでに世界で6例の報告があるのみ.
治療
1)急性発作の予防:
誘因を避けるように指導する.月経に伴い急性発作を起こす症例では,LH-RH アナログを用いて月経を止めることも効果がある.
2)発症時の治療:
 a)対症療法:使用禁止薬物(病状を悪化させる可能性がある薬物)を絶対使用しない.疼痛,腹痛には,クロルプロマジンおよび麻薬,不安,神経症には,クロナゼパム,クロルプロマジン,高血圧,頻脈にはβ遮断薬,SIADHには,補液による電解質の補充.
 b)グルコースを中心とした補液:詳細な機序は不明ではあるが,ALASの酵素活性が抑制され急性発作を改善させるといわれており,現在,最も一般的に行われている治療法である.
 c)ヘム製剤(ヘムアルギニンあるいは塩酸ヘマチン): 細胞内ヘム濃度を上昇させ,ネガティブフィードバック作用により,ALASの酵素活性を抑える.病態に則した治療法であり,欧米では第一選択療法.わが国では保険適応されていないが,現在,臨床治験中で,近い将来,使用可能となると思われる.
 d)スズプロトポルフィリン: 上記治療に併用される.ヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼを抑制し,細胞内のヘム濃度を上昇させる.本薬剤は光線により励起されるので,本薬剤使用中は遮光が必要.
 e)その他: シメチジンは作用機序は不明であるがALAおよびPBGを減少させる効果がある.血液透析は重症例で行われることがある.[大門 真]
■文献
大門 真:ポルフィリン症. Year note 2010 Selected Articles, pp719-729, メディックメディア,東京,2009
厚生労働省遺伝性ポルフィリン症研究班:ホームページ(医療関係者向け). http://www.med.kindai.ac.jp/derma/index2.html

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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