平安時代の僧,明覚(みようがく)の著。4巻。1101年(康和3)以後成立。悉曇学の知識を問答体によって詳説した,当時のこの学の最高水準を示す著である。豊富な文献の引用は,著者の博識を見るに足り,所説もまた,中世以後の悉曇の書にいちじるしい神秘幽暗の色をもたない。しかし,本書が今日注意されるのは,悉曇を説くにあたり,いろいろと日本語の例を傍証としてあげている点にかかる。すなわち,著者は,すぐれた学者的資質をそなえ,鋭い観察眼をもっていて,そのたまたま書き残した日本語に関する記述が,今日では,古代日本語の一面を明らかにする貴重な資料となっている。なお,明覚には,《反音作法(はんのんさほう)》《梵字形音義》などの著述もある。
執筆者:亀井 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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