感情労働者(読み)かんじょうろうどうしゃ

知恵蔵 「感情労働者」の解説

感情労働者

自分が本来抱く感情を管理しながら、相手に合わせた言葉や態度で応対する「感情労働」に携わる労働者。仕事をする上で、顧客などに対する感情のコントロールが特に求められる職種、航空会社の客室乗務員やホテルの従業員を始めとしたサービス業の従事者や営業職、看護師、介護士、教師などが挙げられる。相手と対面しない企業の苦情処理係やコールセンターのオペレーターなども感情労働者に当てはまる。
感情労働とは、米国の社会学者、アーリー・ホックシールドが1983年、著書『The Managed Heart(管理される心 心が商品になるとき)』で唱えた労働の概念で、「肉体労働」「頭脳労働」に続く第3の労働形態と言われている。同著は2000年に日本でも翻訳版が刊行された。
感情労働者は、顧客の非常識と考えられるクレーム嫌がらせに対しても、自分の感情を押さえて適切に振る舞うことが求められるため、気付かないうちにストレスを抱えていることがある。
感情労働者が抱えるストレスへの予防策などを求める動きも起こっている。流通業やサービス業などの産業別労働組合UAゼンセン」は18年8月、ストレスの原因となる悪質なクレームや迷惑行為への対策を求める約176万筆の署名厚生労働省に提出した。同組合が17年6~7月、接客対応の組合員約5万人に実施したアンケート調査では、回答者の約7割が暴言や同じ内容を繰り返すクレームといった迷惑行為に遭遇し、うち9割以上が「ストレスを感じた」と答えている。

(南 文枝 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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