内科学 第10版 「感染症法と類型分類」の解説
感染症法と類型分類(感染症総論)
平成11(1999)年4月から『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』(以下感染症法)が施行された.この法律は,明治以来続いていた伝染病予防法やその後制定された性病予防法,後天性免疫不全症候群の予防に関する法律を廃止・統合したものである.5年をめどに見直すことが定められており,すでに何度も改正されている.平成18(2006)年には大幅な改正があった.結核予防法が感染症法に統合され,平成19(2007)年4月から結核対策は感染症法に準拠することとなった.また,生物テロ対策のための病原体管理規制が追加され,感染症法が疾病としての類型分類(表4-1-3)と特定病原体(一部毒素を含む)の管理規定の両者を包含する法律となった.特定病原体については,内科学と大きな関連はなく,ここには記述しない.必要があれば厚労省のHPや別の解説書を参照されたい.
感染症の類型
既知の感染症のうち,国としての対策の観点から重要と考えられるものが一類から五類に分類されている(表4-1-3).感染症法の見直しにより類型分類は変遷してきた.今後も変化しうるので,新しい情報については厚労省のHPなどで確認されたい.ただし,類型が必ずしも疾患の重症度によって分けられているものではないことを理解しておくべきである(例:発症すれば最も死亡率の高い狂犬病が四類感染症に分類されているなど). 一類感染症は,地球上から自然感染事例が消滅した痘瘡,および各種出血熱など国内に存在しない重症の感染症があげられている.二類感染症は,一類感染症ほど重症ではないが国として特に重要視している感染症があげられている.平成18年度の改正によって結核は二類感染症として位置づけられた.三類感染症は,以前は腸管出血性大腸菌感染症だけであったが,平成18年度の改正によって重要な細菌性腸管感染症がまとめられた.四類感染症は,動物またはその死体,飲食物,衣類,寝具その他の物件を介して人に感染し,発生時にはそのための対策が必要となるものがまとめられている.五類感染症は,おもにサーベイランスを目的としたものであって全数届出対象の疾患と厚生労働省の定めた定点からの届出対象の疾患がある(表4-1-3).[岩本愛𠮷]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報