成忍(読み)じょうにん

改訂新版 世界大百科事典 「成忍」の意味・わかりやすい解説

成忍 (じょうにん)

高山寺中興の明恵上人高弁の弟子で,鎌倉前期の13世紀前半に活躍した画僧恵日房(えにちぼう)の号がある。成忍は仏画俊賀とともに高山寺にあって,いち早く宋画の影響を受け入れ鎌倉時代絵画新風を起こした。高山寺の明恵上人座像(国宝)は彼の筆と伝えられ,《華厳縁起絵巻元暁巻の筆者にも擬せられる。
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朝日日本歴史人物事典 「成忍」の解説

成忍

生年生没年不詳
鎌倉前期(13世紀前半)に活躍した画僧。恵日房と号す。京都高山寺の明恵上人の弟子で,『高山寺縁起』などによれば,上人像をはじめ同寺にかかわる多くの絵を描いたことが知られる。同寺所蔵の「明恵上人樹上坐禅図」も成忍の作と伝えるが,真摯な宗教生活を送った明恵の清廉な人柄を描き留めた傑作である。ほかに「華厳宗祖師絵巻」の元暁の巻(高山寺蔵)も成忍の筆とみられる。明恵が賛文中に「同宿沙門恵日房成忍」と記したり,成忍が経典書写を行った例などは,成忍が単なる絵師でなく画僧というべき存在であったことを示している。<参考文献>平田寛「明恵の周辺―恵日房成忍と俊賀の場合―」(『哲学年報』34号)

(矢島新)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「成忍」の解説

成忍
じょうにん

生没年不詳。鎌倉前期の画僧。号は恵日坊(えにちぼう)。高山寺明恵(みょうえ)の弟子で,画技にすぐれ,13世紀前半に明恵周辺の絵画制作に大きな役割を果たしたと想定される。成忍制作が立証できる現存作品はないが,明恵の縄床樹上座禅の姿を写した「明恵上人像」は成忍筆の可能性が高いという。また画風上,それと共通点の多い「華厳縁起」の制作にも,彼が深く関与していた可能性が指摘される。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「成忍」の解説

成忍 じょうにん

?-? 鎌倉時代の画僧。
京都高山(こうざん)寺の明恵(みょうえ)(1173-1232)の弟子。宋画(そうが)をまなび,明恵の指導のもと,宅磨俊賀(たくま-しゅんが)とともに仏画の制作にあたった。「明恵上人樹上坐禅図」「華厳宗(けごんしゅう)祖師絵巻」元暁(げんぎょう)の巻の作者とされる。号は恵日房。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成忍」の意味・わかりやすい解説

成忍
じょうにん

鎌倉時代初期の画僧。房号は恵日坊 (えにちぼう) 。高山寺の明恵上人の弟子で,画技にすぐれ多くの仏画を描いたと伝えられ,また明恵の肖像を描いたことが知られる。高山寺の『明恵上人樹上坐禅像』『華厳宗祖師絵巻』の「元暁の巻」は彼の筆に比定される。宋風の筆致と清純な画趣が特色。

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百科事典マイペディア 「成忍」の意味・わかりやすい解説

成忍【じょうにん】

鎌倉初期の京都高山(こうざん)寺の僧。恵日(えにち)坊と称し明恵(みょうえ)の弟子。画技にすぐれ,《明恵上人座像》の作者と伝え,また高山寺蔵の図像や絵巻の中には成忍の作があると伝えられる。

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世界大百科事典(旧版)内の成忍の言及

【華厳縁起】より

…一方,元暁絵は,悟るところがあって渡唐途中で引き返し,山中や市井に自適して修行する元暁の行状を描く。画風は,義湘絵が構図法や暢達した筆致に本格的な職業画家による画技をうかがわせるのに対し,元暁絵は素朴な詩情に満ち,明恵に近侍した成忍(じようにん)の筆と一致するように思われる。いずれも前代の絵巻に比べ,構成や描線に新風が感じられ,中国の風俗描写も的確で,高山寺を中心として広まりつつあった宋文化との接触による宋画の影響も考えられる。…

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