元暁(読み)がんぎょう(英語表記)Wǒn-hyo

精選版 日本国語大辞典 「元暁」の意味・読み・例文・類語

がんぎょう グヮンゲウ【元暁】

七世紀の新羅の僧。華厳中心多数著作を残す。非僧非俗の生活を送り、念仏を広めた。著は「華厳経疏」「大乗起信論疏」が有名。(六一八‐六八六

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改訂新版 世界大百科事典 「元暁」の意味・わかりやすい解説

元暁 (げんぎょう)
Wǒn-hyo
生没年:617-686

朝鮮,新羅の僧,仏教学者。〈がんぎょう〉とも読みならわす。誓幢和上,和諍国師,高仙大師とも称される。29歳で出家し,650年には義湘とともに入唐を試みた。しかし途中,いっさいのものは心より生ずるとの悟りをひらき,入唐のこころざしを放棄した。以後経論の研究に専念し,《金剛三昧経論》《大乗起信論疏記》《十門和諍論》など多くの著作を残した。諸派の仏教思想を総合,整理したその独自な思想体系は中国仏教や以後の朝鮮仏教に大きな影響を与えた。また歌舞念仏を通じて民衆への布教につとめ,民衆仏教の形成に果たした役割は大きい。戒律を破って結婚し,還俗して小姓居士と名のるなど,その行動は自由奔放であった。薛聡(せつそう)はその子。
華厳縁起
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「元暁」の意味・わかりやすい解説

元暁
がんぎょう
(617―686)

新羅(しらぎ)(朝鮮)の仏教者。元暁宗の祖。諡(おくりな)は大聖和静国師(だいしょうわじょうこくし)。俗姓は薛(ソル)氏。29歳のとき皇龍寺(こうりゅうじ)で出家し、法論に秀でた。650年、法相(ほっそう)宗の興隆を聞いて義湘(ぎしょう)とともに入唐(にっとう)を志したが、途中で思いとどまり帰国した。以後、子の薛聡(せっそう)(生没年不詳)をもうけるなど、小姓居士(しょうしょうこじ)と称して在俗者のごとくふるまいつつ、仏教、とくに華厳(けごん)思想の宣揚に努めた。著書に『金剛三昧経論(こんごうさんまいきょうろん)』3巻、『華厳経疏(きょうしょ)』10巻(1巻現存)、『起信論疏(きしんろんしょ)』2巻、『涅槃宗要(ねはんしゅうよう)』1巻、『十門和諍論(じゅうもんわじょうろん)』2巻(残欠)などがあり、中国華厳宗の法蔵(ほうぞう)の教学にも大きな影響を与えた。

木村清孝 2017年1月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「元暁」の意味・わかりやすい解説

元暁
がんぎょう
Wǒnhyo

[生]真平王39(617)
[没]神文王6(686)
朝鮮,新羅の学僧で浄土教の先駆者。姓は薛。児名は誓幢。幼年花郎として過し,31歳に皇竜寺で僧となり修道,義湘とともに2度にわたり入唐を試みたが,始めは高句麗軍に阻止され,次は党項城の古塚で大悟して断念。芬皇寺に住み通仏教 (元暁宗,芬皇宗,海東宗とも称される) を提唱,普及に努めた。奔放な性格で,形式主義を批判し,大乗仏教の教理を実践,『金剛三昧経』などを王と高僧に講読する一方,楽器などを用いて民衆を教化し,感化を及ぼした。また瑤石公主と結び,のちの大学者薛聰を育てた。晩年は参禅と著作に没頭,『金剛三昧経論』『大慧度経宗要』『法華経宗要』『華厳経疏』『戒本私記』『十門和諍論』など 100種余,240巻余の著書がある。

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世界大百科事典(旧版)内の元暁の言及

【元暁】より

…朝鮮,新羅の僧,仏教学者。がんぎょうとも読みならわす。誓幢和上,和諍国師,高仙大師とも称される。29歳で出家し,650年には義湘とともに入唐を試みた。しかし途中,いっさいのものは心より生ずるとの悟りをひらき,入唐のこころざしを放棄した。以後経論の研究に専念し,《金剛三昧経論》《大乗起信論疏記》《十門和諍論》など多くの著作を残した。諸派の仏教思想を総合,整理したその独自な思想体系は中国仏教や以後の朝鮮仏教に大きな影響を与えた。…

【華厳縁起】より

…《華厳宗祖師絵巻》ともいわれる。7世紀の半ば,唐に渡り華厳宗を新羅に伝えた2人の祖師,義湘(ぎしよう)と元暁の行業を描く絵巻。制作は13世紀前半。…

【ヒョウタン(瓢簞)】より

…朴姓は朝鮮では金姓などと並ぶ大姓になっている。また,新羅の傑僧元暁はパガジで作った道具を用い,踊念仏を創始して村々を回ったという(日本の空也上人の踊念仏の源流とも考えられる)。朝鮮の仮面劇の面は,今日でもパガジで作ることが多い。…

【仏教】より

…新羅仏教の極盛期は半島が統一された文武王から恵恭王にいたる,670年代から約100年余りの間である。この時期の仏教界を代表するのが元暁と義湘であった。元暁は和諍(わじよう)思想を説き,義湘は華厳十刹を創建した。…

※「元暁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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