房室中隔欠損症・心内膜床欠損症

内科学 第10版 の解説

房室中隔欠損症・心内膜床欠損症(先天性心疾患)

定義・概念
 心臓発生過程で心内膜内皮細胞が上皮-間葉変換により間葉系細胞に形質変換して間葉組織(心内膜床)がつくられ,そこからさらに房室弁やその近傍の心房中隔・心室中隔が形成される.房室中隔欠損症は心内膜床の発生異常により心房中隔欠損・心室中隔欠損および房室弁の形態異常をきたす疾患である(図5-8-5).以前は心内膜床欠損症とよばれていたが,最近は房室中隔欠損症とよばれることが多い.Down症候群児に多くみられる.心房中隔欠損・心室中隔欠損があり共通房室弁を有する完全型(図5-8-5D)と,心房中隔欠損のみで僧帽弁と三尖弁が分離し僧帽弁前尖に裂隙(cleft)が存在する不完全型(図5-8-5C)に分けられる.不完全型は心房中隔欠損+僧帽弁閉鎖不全血行動態となり,肺高血圧は軽度であるが(図5-8-6A),完全型は心房中隔欠損+心室中隔欠損+共通房室弁閉鎖不全の血行動態となり,大量の左→右短絡が生ずるために早期に肺高血圧をきたす(図5-8-6B).
自覚症状
 完全型では乳児期から心不全をきたし,多呼吸,体重増加不良,易感染性を認める.不完全型では心房中隔欠損症とほぼ同じであるが,僧帽弁閉鎖不全のため症状出現時期は心房中隔欠損症より早くなる.
身体所見
 完全型では心室中隔欠損症と同様に胸骨左縁第3~4肋間に汎収縮期雑音(短絡血流による)を聴取する.短絡量が多い場合はⅢ音や拡張期ランブル(左心系容量負荷による相対的僧帽弁狭窄による)を聴取する.不完全型では心房中隔欠損と同様の聴診所見であり,僧帽弁閉鎖不全が顕著な症例ではさらに心尖部に汎収縮期雑音を聴取する.
検査
成績
 心電図では左軸偏位,不完全右脚ブロック,PR時間延長が特徴的である.胸部X線写真では,完全型で乳児期早期から心陰影の拡大と肺血管陰影の増強を認め,不完全型では心房中隔欠損と同様の所見を認める.心エコーでは,完全型で心房中隔下部の心房中隔欠損と心室中隔上部の心室中隔欠損がみられ,不完全型では心房中隔下部の心房中隔欠損がみられる(図5-8-7).
治療方針
 不完全型では心房中隔欠損症に準じて治療するが,手術時期は心房中隔欠損症よりも早くなることが多い.完全型では乳児期中期までに手術を行う.[塩島一朗]
■文献
中澤 誠:先天性心疾患(新「目でみる循環器病シリーズ」13).メジカルビュー社,東京,2005.山岸敬幸,白石 公:先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学.メジカルビュー社,東京,2007.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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