所宛(読み)トコロアテ

デジタル大辞泉 「所宛」の意味・読み・例文・類語

ところ‐あて【所宛/所充て】

平安中期から鎌倉時代、諸官司や諸官寺の別当を任命して職務行事担当をきめたこと。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「所宛」の意味・わかりやすい解説

所宛 (ところあて)

所充とも書く。平安中期から鎌倉時代にかけて,朝廷,院宮,摂関大臣家で行われた,別当を補任する儀。

(1)朝廷 殿上所宛と官所宛がある。(a)殿上所宛は,除目(じもく)ののち内裏清涼殿の殿上間で,摂関以下の公卿,弁,蔵人,近衛官人など殿上人を,諸司所々諸寺の別当に補任する儀。担当の上卿は,まず別当の闕否を弁に注進させ,先例に依拠して闕を補充し弁に土代(原案)を作成させる。ついで上卿は土代をもとに殿上で天皇,摂関の裁可をうけて所宛定文を作成し,弁から史に下す。史は定文をもとに官符・宣旨によって,または直接当該官司の人を召して,新別当の補任を告げる。定文は,令制的内廷諸司(おもに宮内省,中務省所管の寮,司,職),蔵人所が統括する天皇家政機関(禁中所々),七大寺以下諸寺の順に排列し,公卿以下の殿上人をそれぞれの別当に配分している。公卿,弁,頭は1人でいくつもの別当を兼ね,官司によっては公卿別当と弁(蔵人)別当の2種を置く。(b)官所宛は,2月の列見ののち,太政官朝所(あいたんどころ)で,弁,史を厨家など諸司・所々諸寺の別当に補任する儀。大弁宣で補任する。殿上所宛と同じ内廷官司を含み,その場合,公卿別当,弁別当,史別当の3種の別当を置くことになる。9世紀末~10世紀初頭は,政務運営の場が内裏に移り,宮廷行事体系が成立し,禁中所々が整備されるなど,令制的官司統属では政務・行事運営が困難になってきた時期であり,朝廷ではかかる状況に対応して,朝廷最高首脳である公卿,天皇秘書官である蔵人,太政官事務局員である弁,史ら朝廷中枢を,別当に任ずることによって,諸司・所々諸寺を直接掌握・指揮させ,行事・儀式の運営の円滑化をめざしたのである。所宛の史料的初見は909年(延喜9)であり,所宛が寛平~延喜初年(9世紀末~10世紀初)に始まったことを推定させる。

(2)院宮 院庁で院司を御祈願所,御服所,仕所,別納所など所々の別当に補任する儀を院所宛といい,初見は984年(永観2)円融院所宛。東宮坊,中宮職で大夫,亮以下の職員を所々勾当,所預,史生等に補任する儀を,それぞれ東宮所宛,中宮所宛という。

(3)私家所宛 摂関家,大臣家で,家司を政所,侍所,御厨,御随身所など所々の別当,職事に補任する儀。通例,8月,政所で行われる。
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世界大百科事典(旧版)内の所宛の言及

【別当】より

…9世紀(とくに末期に集中的)に設置されていった蔵人所所管の天皇家政諸機関(内舎人所,進物所,楽所など陣中所々)でも公卿,蔵人(頭)らが別当に補任された。寛平~延喜初年(9世紀末~10世紀初)から,公卿,蔵人(頭),弁,史らを令制諸官司,陣中所々,諸大寺有封寺の別当に補任する殿上所宛(ところあて),官所宛が行われ,朝廷の儀式・行事は,陣定(じんのさだめ)の決定や天皇,摂関,上卿の指示のもとに,関係諸司の別当が所管官司を指揮監督して運営されるようになった。(5)家司(けいし) 親王家,三位以上家の家政を担当する家司の上首。…

※「所宛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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