六訂版 家庭医学大全科 の解説
手関節TFCC損傷と手関節捻挫
てかんせつティーエフシーシーそんしょうとてかんせつねんざ
Triangular fibrocartilage complex (TFCC) injury of the wrist, Wrist sprain
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな外傷か
手関節捻挫は、手をついたり、ひねったりして、手関節部に疼痛が生じる軟部組織損傷で、いくつかの病態があります。そのなかのひとつにTFCC損傷があります。TFCCとは、
TFCC損傷は、転倒して手をついたりしたときなどの外傷によって生じる場合、慢性的な使いすぎによって生じる場合、加齢性の変化で生じる場合があります。
見落としやすい外傷と合併症
手関節捻挫は、手関節X線検査では異常がないのですが、放置すると難治性になる場合もあるので、
症状の現れ方
手関節捻挫では、手関節の疼痛とはれが現れます。TFCC損傷では、手関節の尺側(小指側)に疼痛、はれが生じ、前腕の回旋動作によって痛みが強くなります。
検査と診断
手関節捻挫は、圧痛(押すと痛むこと)がどこにあるかでどの部分の損傷であるか、ある程度の診断が可能です。ただ、受傷直後の疼痛が強い時期には、損傷部を診断することが困難なことも少なくありません。
TFCC損傷では、TFCCの圧痛、
TFCCは単純X線写真には写りませんが、手関節X線検査で
治療の方法
手関節捻挫に対しては、手関節部が動かないように外固定を行います。圧痛の軽減の有無が、外固定を除去する目安になります。
TFCC損傷においても、外傷性のものに対しては、3~4週間の外固定を行います。慢性的な使いすぎ、変性による場合は、局所麻酔薬とステロイド薬の関節内注射や、付け外しが簡単な装具を装着します。
いずれも疼痛が持続する場合は、関節鏡視下にTFCC中央の部分切除術を行ったり、尺骨が橈骨に対して長いものでは、尺骨短縮術などの手術を行います。
外傷を負ったら
手関節を動かないように固定すると、疼痛が緩和されます。早期に整形外科を受診することをすすめます。
手関節捻挫と間違えやすいものに手の舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折があります。初期の単純Ⅹ線写真では骨折が写りにくい特徴があります。3週間を過ぎても痛い場合は、手の外科専門医の受診をすすめます。このなかには、早期に治療しないと、難治性になってしまうタイプの骨折があります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報