日本大百科全書(ニッポニカ) 「技術革新力ランキング」の意味・わかりやすい解説
技術革新力ランキング
ぎじゅつかくしんりょくらんきんぐ
Global Innovation Index
世界知的所有権機関(WIPO(ワイポ))が発表する技術革新力に関する国・地域の評価ランキング。英語の頭文字をとってGIIと略称する。アメリカのコーネル大学やフランスの国際的なビジネススクールのインシアード(INSEAD)などと協力し、2007年から技術革新力の年次調査報告書のなかで毎年公表している。2018年時点で、126の国・地域が対象。技術革新を生む環境(innovation input)と、技術革新の実績(innovation output)の2分野を基準に評価している。具体的には、技術革新を生む環境では「公共機関」「人的資本と研究能力」「インフラ」「市場環境」「ビジネス環境」の5項目を、技術革新の実績では「知識・技術の成果」「創造的な成果」の2項目をそれぞれ点数化。合計80種類のデータを合算して順位を決めている。
技術革新力ランキングは世界経済の状況によって順位が変動する性質をもつ。発表当初、首位であったアメリカは2008年のリーマン・ショック後、一時トップ10から陥落。日本も当初トップ10に入っていたが、2010年代前半は20位台に低迷し、ここ数年は10位台(2018年13位、2017年14位、2016年16位)につけている。2018年のトップ10はスイス、オランダ、スウェーデン、イギリス、シンガポール、アメリカ、フィンランド、デンマーク、ドイツ、アイルランドの順。スイスは8年連続首位で、過去3年間トップ10の顔ぶれは変わっていない。技術革新力ランキングは先進・高所得国が上位を占める傾向が強いが、当初30~40位台であった中国が2018年に17位に入るなど、経済成長した新興国の躍進が目だっている。
[矢野 武 2019年1月21日]