広義にはビジネス実務を教えるさまざまな学校や講座などをさすが、日本ではMBA(Master of Business Administration、経営学修士)取得課程をもつ内外の経営大学院の意味で使われることが多い。経営に役だつ財務、会計、マーケティングなどの専門知識や実践的戦略を、ケースメソッドとよばれる実例を基に議論する手法で学ぶ。企業の再編・提携・破綻(はたん)が相次ぐなか、専門知識を求める社会人や学生でビジネス・スクール人気が続いている。
アメリカのハーバード・ビジネス・スクールに代表されるように英米系大学には数多くの名門ビジネス・スクールがある。日本では1978年(昭和53)に慶応義塾大学がMBA取得課程を設置したが、多くの経営大学院は研究者育成という色彩が濃かった。このためビジネスの実務を学ぶ専門課程が必要との機運が高まり、専門職大学院の設置を可能とする改正学校教育法が2003年(平成15)に施行され、全国でビジネス・スクールの開設が相次いだ。現在、東京大学、京都大学、一橋大学などをはじめとして経営、会計、公共政策を学ぶビジネス・スクールは国内に50以上ある。教育期間は通常2年で、海外のビジネス・スクール留学、国内の経営大学院入学、MBA専門校入学の3種類がある。海外留学の場合は1000万円以上の費用がかかるが、国内では100万円台から400万円程度。国内には働きながら通学できる夜間コースもある。
大手企業が幹部候補生を競うように海外のビジネス・スクールへ派遣したバブル経済期(第一次ブーム)に続き、2000年代後半からは第二次ブームになっている。最近は技術と経営の両面に精通したMOT(Management of Technology、技術経営)を学べる大学院も増えている。
[編集部]
ビジネス教育を行う学校あるいは教育機関のことを指すが,その種類は大きく五つに分けることができる。企業に属するものとして,(1)参加者がその企業のメンバーに限られるもの,(2)その企業のメンバー以外の者も参加できるもの。企業外に存するものとして,(3)産業団体などの団体が所有するもの,(4)大学機関に属して大学院の形をとるもの,(5)上記諸タイプの混合形態をとるもの。(1)のタイプは大企業が多くもっている。(2)のタイプはそう多くはないが,ヨーロッパには大きな多国籍企業がスポンサーとなって設立したものが二,三存在する。(3)のタイプには,政府など公共機関からも出資した半官半民の形のものもある。(5)のタイプは,(2)や(3)のタイプのものが(4)のタイプと提携して,そのカリキュラムの一部を共有する場合にみられる。
ビジネス・スクールと呼ばれる最も一般的なタイプは(4)のタイプで,世界的にはハーバード・ビジネス・スクール,スタンフォード・ビジネス・スクール,MITのスローン・スクールなど,アメリカのものが名高い。日本の大学院は学問に重きをおく傾向があるが,アメリカのビジネス・スクールはビジネスマンの養成を主目的としている。なお,日本でも慶応義塾大学大学院経営管理研究科付属ビジネス・スクール(略称,慶応ビジネス・スクール)はこのタイプに近いといえるが,企業に在籍するビジネスマンを対象としている。
執筆者:佐々木 尚人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ビジネス・スクールは俗称であって,実際はスクール・オブ・ビジネス・アンド・マネジメントという正式名称をもっているところがほとんどである。つまり,マネジメントの手法等を学ぶプロフェッショナル・スクールとなるが,アメリカ合衆国でのマネジメント教育の最終目標は,ゼネラリスト的な経営幹部の育成と,財務部門などのスペシャリストの育成の両方にあるといわれている。
アメリカのビジネス・スクールの授業内容は,ロー・スクールやエンジニアリング・スクール,メディカル・スクールなどのように,教えなければならない知識,伝達しなければならない知識の量と範囲によって縛られておらず,柔軟性がある。カリキュラムは各スクールの個性によってさまざまであるが,コアコースと呼ばれる必修科目はどこのビジネス・スクールでもそれほど差はない。この必修科目(ビジネス・スクール)は組織論,研究方法論,財務,政策分析,経済分析,そして人的資源,情報システムなどが代表的なものとなる。卒業生をどれだけ大企業に送り込むかが,ビジネス・スクールのランクを決定する場合にかなり重要な要素となる。職業経験を持っていることが入学条件として挙げられているビジネス・スクールも多く,学生集団の構成を見ても,学部から直接進学してきた者の比率はそれほど高くない。最近では,とくに企業の中堅幹部やトップ幹部を対象としたプログラムを開設するところも増加している。
著者: 山田礼子
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