日本大百科全書(ニッポニカ) 「採用選考指針」の意味・わかりやすい解説
採用選考指針
さいようせんこうししん
大学、大学院などの新卒予定者の採用活動解禁日などの原則を示すガイドライン。正式名称は「採用選考に関する指針」。日本経済団体連合会(経団連)が2013年(平成25)から「公平・公正で透明な採用の徹底」「正常な学校教育と学習環境の確保」に配慮しながら、会社説明会、面接、内定日などの解禁時期を示してきたが、2021年に廃止される。2016年から2020年の間に卒業・修了予定である大学生・大学院生については、企業説明会などの就職活動(就活)の解禁時期を「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、企業が面接などの選考を開始する時期を「卒業・修了年度の6月1日以降」、正式に内定を出す日を「卒業・修了年度の10月1日以降」としている。指針は経団連に加盟する企業に遵守を求める自主ルールで、強制力はなく、罰則規定もない。このため外資系企業やIT関連企業など経団連に加盟していない企業には拘束力をもたない。経団連は2018年、外資系やIT関連企業の増加、中途・通年採用の拡大などで、日本型雇用システムが前提とした新卒者の一括採用制度が崩れ、採用選考指針が形骸(けいがい)化しているとして、同指針を2021年卒業・修了予定者から廃止すると決めた。これを受け、政府は大学や経済界と協議し、政府主導で採用選考指針を引き継ぐ新ルールをつくる。当面、2021年卒業・修了予定者らに対しては、2020年と同様のルールを適用する。
なお大卒者などの就職ルールについては、1953年(昭和28)に就職協定が制定され、1997年(平成9)に就職協定にかわる緩やかなガイドラインとして倫理憲章ができ、さらに2013年には倫理憲章が採用選考指針に改められた。他社より早く優秀な人材を確保しようとする企業と、就職活動時期を遅らせて十分な学業期間を確保しようとする大学・政府とのせめぎ合いが続いており、就職ルールに関する制度や内容はたびたび改定されている。
[矢野 武 2019年3月20日]