摩耶夫人(読み)マヤブニン

日本大百科全書(ニッポニカ) 「摩耶夫人」の意味・わかりやすい解説

摩耶夫人
まやぶにん

ブッダ釈迦(しゃか))の生母パーリ語、サンスクリット語でMāyāまたはMahāmāyāと書く。後者はマーヤー尊称で、大マーヤーの意。若くして姉妹のマハー・パジャーパティーMahā Pajāpatīとともにカピラバストゥの浄飯(じょうぼん)王(シュッドーダナŚuddhodana)に嫁し、40歳ないし50歳の高齢で、のちにブッダとなる子を生む。彼女はブッダの母たるにふさわしい徳を備えており、とくに五戒を犯したことがなかったという。彼女は懐妊したとき、鼻に白蓮(びゃくれん)をもった白象に姿を変えた菩薩(ぼさつ)が彼女の右脇(わき)に入る夢をみたという。懐妊後は四守護神に見守られて過ごしたが、胎内の子は外からも透けて見えた。10か月の妊娠期間が終わろうとするとき、里のデーワダハに戻る途中ルンビニーにとどまり、そこでサーラ樹の一枝をつかみながら子を出産した。しかし彼女は出産7日後に死去し、忉利天(とうりてん)に再生したという。

高橋 壯 2016年12月12日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「摩耶夫人」の意味・わかりやすい解説

摩耶夫人
まやぶにん

[生]?
[没]前463頃
釈尊の生母。摩耶はサンスクリット語 māyāの音写で,摩訶摩耶 Mahāmāyāとも呼ばれている。摩訶は「偉大なる」という尊称と考えられるが,また Māyāと Mahāmāyāとは別人で,姉妹であるという伝説もある。所伝の間に差異があり明確に伝記を定めることは困難である。デーバダハ (天臂城) のスブーティ王の娘で,浄飯王の妃となった。白象が自分の胎内に入るのを夢みて,釈尊を懐妊し,出産のため実家に帰る途中,ルンビニー園でサーラ樹に右腕を伸ばして枝をつかんだとき,右脇から釈尊が誕生したという。釈尊誕生後7日目に命を失ったと伝えられている。

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