日本大百科全書(ニッポニカ) 「支持価格制度」の意味・わかりやすい解説
支持価格制度
しじかかくせいど
sustained price system
市場機構にゆだねておいた場合に決まるであろう競争価格に対して、政府が財・サービスの価格を、一定の値ないし一定の範囲に収まるように政策的に規制ないし誘導する制度をいう。対象となる財・サービスには、第一次産品などのほか、労働サービス(賃金)および国債などの金融資産(価格ないし利子率)がある。
政府は通常、市場が競争的であれば資源の効率的配分を実現するという意味で、望ましい市場成果をもたらすように、競争促進的な政策を採用すべきである。これに対し、価格を支持・規制するのは、これら財・サービスを生産する産業の価格と所得が不安定であったり、産業内部に過剰資源が存在したり、産業の生産性が低く、非効率が存在する、という理由による。
しかし、このような競争抑制政策は、元来他の分野に振り向けるべき資源を非効率なまま温存することになり、単に資源の最適配分が実現されないだけでなく、所得の公平分配の見地からも望ましくない。なぜなら、価格支持によって得られる利益は高所得階層にも及ぶという意味で垂直的公平が妨げられるだけでなく、特定の価格支持を受ける産業に従事する人々だけが利益を受けるという意味で水平的公平をも妨げられることになるからである。また、最低賃金法は失業の発生を招くことがあり、国債の価格支持はインフレを生じることがあるという問題ももっている。
[藤野次雄]