知恵蔵 「改正競馬法」の解説
改正競馬法
長らく日本の競馬は、JRAや都道府県又は指定市町村以外の者が馬券やこれに類似するものを発売して、競馬を行ってはならないとされてきた(05年の改正で民間への馬券発売委託は可能になった)。そのような折、1990年代の末頃から国内競走馬の海外レースでの活躍が目立ち始め、2006年のフランスG1レース・凱旋門賞にディープインパクトが参戦すると、地上波のテレビ生中継は関東地区で16.4%、関西地区では19.7%(いずれもビデオリサーチ調べ)を記録。大いなる関心を集めて、海外レースの馬券発売を望む声が高まった。
こうした競馬の国際化の進展等により国内競走馬が海外レースへ出走することが多くなったが、それまでの競馬法ではJRA等が海外レースの馬券を発売することができなかった。監督官庁である農林水産省によれば、国内競走馬が出走していても馬券の売り上げを原資とした畜産振興等の公益への貢献ができない状況になること、有力馬が国内競争に出走しなくなることに伴う売り上げの減少への懸念があり、このことから、JRA等が特定の海外レースの馬券を発売することができるように法律が改正されたのである。なお、レースは時差の関係で日本における深夜に行われることがあるため、競馬場や場外発売所等での馬券の発売は近隣の迷惑になることなどを考慮して、発売はインターネット限定とされた。
16年10月2日にフランスで行われた第95回凱旋門賞が、海外レース馬券の日本における初めての発売となった。発売開始は日本時間の同日午前10時で、締め切りは出走予定である午後11時5分の4分前だった。JRAはこのレースにおける日本国内の馬券の売り上げが41億8599万5100円だったと発表。これは現地フランスのPMU(フランス場外馬券発売公社)の発売金の倍以上の金額であった。
(場野守泰 ライター/2016年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報