競馬(読み)くらべうま

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

競馬
くらべうま

こまくらべ,きそいうま,きおいうまなどともいう。奈良,平安時代に朝廷や貴族間で行われた馬の競走。左右に分れ,各1騎ずつが一の鳥居と二の鳥居の間につくられた直線の馬場で速さを競い,10番の勝負で左右いずれかの勝ちを決める。また 10騎を並べ駆けさせて争う,のちの競馬 (けいば) と同じような形式のものもあった。寛治7 (1093) 年5月5日の節会 (せちえ) に宮中武徳殿で行われたのが最初。平安時代後期にこの行事はすたれたが,以後は春日,賀茂など諸神社の祭儀として引継がれ,賀茂別雷 (わけいかずち) 神社では五穀豊穰の祈願をこめて現在も5月5日に行われている。

競馬
けいば
horse racing

一般には,馬あるいは馬の引く車に騎手が乗って疾走し,その勝負に賭け合うことを目的とする公認の賭け事をさす。賭けの形態には,(1) 馬主同士が各自の持ち馬の勝利に賭ける,(2) 競馬施行者またはその受託者が独占的に発売する勝馬投票券に賭ける,(3) 私企業のブックメーカーが不特定の客と賭けるなどの種類がある。発祥地はイギリスとされており,17世紀頃には王侯貴族や富裕地主の庇護を得て,18世紀末頃までに制度上の基礎は一応確立した。その後世界各国へ伝えられて発展し,上流階級の趣味としてだけでなく,最も普遍性の高い大衆娯楽の一つとして人気を集めている。現在ではかつて強調された馬の品種改良,馬事思想の普及などよりも,競馬開催による収益が国または地方公共団体の財政に寄与している面を重視するのが世界的な傾向である。日本では文久1 (1861) 年,イギリス人を中心とする居留民が横浜で催したのが最初である。 1923年には競馬法が公布され,以後何度かの改正を経て,現在では日本中央競馬会による中央競馬と地方公共団体の地方競馬という2体系で施行されている。競馬の種目には,平地競走障害競走繋駕 (けいが) 速歩競走のほか,フランスで盛んな騎乗速歩競走,日本の地方競馬で行われている輓曳 (ばんえい) 競走,スイスのスキー競馬など特殊な競馬もある。また負担重量を課す制度による分類としては,馬齢や競走距離などによってあらかじめ負担重量を定めた馬齢重量競走,出走各馬に各競走ごとに決める別定重量競走,出走全馬に同等の勝機を与えるよう勘案して課すハンディキャップ競走の3種類がある。

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デジタル大辞泉の解説

けい‐ば【競馬】

それぞれの馬に騎手が乗って所定の距離を一緒に走らせ、速さをきそわせるもの。現在は、勝ち馬・着順などを当てる賭けの対象として行われ、競馬法によって認可された団体が勝ち馬投票券(馬券)を発売し、的中者に配当金が支払われる。
競(くら)べ馬」に同じ。
「御祈には百番の芝田楽、百番の一つ物、―、流鏑馬(やぶさめ)」〈平家・一〉
競馬香」の略。

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百科事典マイペディアの解説

競馬【くらべうま】

5月5日,端午の節句の日に朝廷が催した,馬が走る速度を競う競技。1回の競技に左方・右方の2頭ずつで競い,全部で10回行う。左右双方の合計点で勝敗を決する。馬場は,大きく三つの部分から構成されていて,第1の木の位置を馬出(うまだし)と呼んで出発点とし,第2の木の位置で鞭(むち)を入れ,第3の木の辺りに鉾(ほこ)を立てて馬駐(うまどめ)と呼んで決勝点とした。馬駐には審判員が位置し,着順を判定した。 競馬のもっとも古い記録は《続日本紀》の大宝1年(701年)5月5日の条で,このころにはまだ〈走馬〉(はしりうま)と呼ばれていた。競馬ということばが定着するのは《類聚国史》の出る寛平4年(892年)ころと考えられている。初めは朝廷や貴族の間で行われていたが,平安時代末期には衰退し,それに代わって神社の境内で行われる競馬が盛んになった。京都の上賀茂神社(賀茂別雷神社)で行われる〈賀茂競馬〉は有名で,いまも盛んである。この競馬は堀河天皇の〈天下泰平五穀成就〉の勅願(寛治7年,1093年)によって始まったという。競馬は,今日もなお,全国各地の賀茂神社の系譜に多く伝承されている。→競馬(けいば)
→関連項目年占

競馬【けいば】

騎馬の競走。スポーツであるとともに,馬券による賭(かけ)が行われるギャンブルでもある。近代競馬は14世紀ころ英国の貴族らが持馬の優劣を競ったことに始まる。18世紀末に馬主が賞金を出し合って勝馬に与えるスイープ・ステークス形式の賭が生まれ,さらに馬券発売の賭に発展。英国のエプソムやアスコット,フランスのロンシャンなどが名高い競馬場で,また社交場でもある。日本では古くから競馬(くらべうま)の神事があるが,洋式競馬は慶応年間に横浜の根岸で居留外人の行ったものが最初で,1906年の東京池上競馬で初めて馬券が売られた。現在は〈競馬法〉に基づき,日本中央競馬会の中央競馬(府中,中山,淀など)と,都道府県,特定の市町村の地方競馬が行われ,中央競馬では単勝式,複勝式,連勝複式(枠番連勝,馬番連勝)の4種の馬券(勝馬投票券とよばれる)が売られている。英国のダービーオークス,米国のケンタッキー・ダービーなどが著名。日本ダービーは英国にならったもの。競走馬にはサラブレッド種,アラブ種があり,前者では平地,障害両競走,後者では平地競争のみ行われる。繋駕速歩(けいがそくほ)競走にはトロッター種が用いられたが,これは1968年以後中央競馬では行われていない。
→関連項目シンザン野平祐二ハイセイコー

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世界大百科事典 第2版の解説

けいば【競馬】

騎馬の競走。定められた条件のもとで2頭以上の馬を走らせ,その勝負を競う。
【歴史】

[西洋]
 現代の競馬は騎馬による戦闘,戦車競走,狩猟などにその起源をもつといわれる。古くはホメロスの《イーリアス》の中にうたわれた戦車競馬にまでさかのぼることができるが,近代競馬の形態が整えられたのはイギリスにおいてである。記録によれば,1377年,プリンス・オブ・ウェールズ(後のリチャード2世)とアランデル伯爵がニューマーケット付近でそれぞれ自分の馬に乗ってレースを行ったとある。

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大辞林 第三版の解説

けいば【競馬】

競走馬に一定の距離を走らせ順位を競う競技。また、その勝馬や着順などを当てる賭け。競馬法による競馬では、前もって馬券(勝馬投票券)を発売し、的中した者には配当金が支払われる。 「 -場」
競馬香」に同じ。 「千本の蘭鉢・-の香箱/評判記・難波の顔」
くらべ馬うま」に同じ。 [季] 夏。

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精選版 日本国語大辞典の解説

きおい‐うま きほひ‥【競馬】

〘名〙 競馬(けいば)。または、それに出場する馬。くらべうま。うまくらべ。きおい。《季・夏》
※夫木(1310頃)二七「きほひむまの鼓に我れを打ちこめて出だしもはてぬ世にこそ有りけれ〈源仲正〉」
[補注]俳句季語としては、特に五月五日に京都で行なわれる賀茂競馬をいうことが多い。

きそい‐うま きそひ‥【競馬】

※至宝抄(1585)「中の夏〈略〉きそひ馬 競馬の事也」

くらべ‐うま【競馬】

〘名〙 (「くらべむま」とも表記)
① 馬場で馬を走らせて勝負を争う競技。古くは、二頭の馬を直線で走らせた。また一〇頭の馬を走らせることもあった。毎年五月五、六日の節会(せちえ)に、京都賀茂神社で行なわれたのが有名。きおいうま。きそいうま。こまくらべ。《季・夏》 〔十巻本和名抄(934頃)〕
※俳諧・太祇句選(1772‐77)夏「くらべ馬顔みへぬ迄誉にけり」
② 江戸時代、庶民の間で男性の性器の大小をくらべ合うこと。
雑俳・柳多留‐一三五(1834)「釣べ銭もちゃげる下々のくらべ馬」

けい‐ば【競馬】

〘名〙
所定の区域間で、乗り手が馬を駆けさせて、勝ち負けをあらそうこと。神事や武術競技として行なわれた。くらべうま。こまくらべ。
※高野本平家(13C前)一「あらはれての御祈には百番の芝田楽、百番のひとつ物、競馬(ケイバ)、流鏑馬、相撲おのおの百番」
② 近代、馬をつかってする賭けの一種。騎馬を競走させて、その着順をあてるもの。あらかじめ勝馬投票券(馬券)を発売し、着順的中者には配当金が払い戻される。
※日新真事誌‐明治五年(1872)四月二日「今月二日より三日の間横浜において競馬を興行す」
評判記難波の㒵は伊勢の白粉(1683頃)二「はっかんの鳥籠(とりかご)、千本の蘭鉢、けいばの香箱、いがらし蒔絵の大書棚」
[語誌](1)京都賀茂神社の競馬神事は、平安時代に武徳殿で行なわれた様式を伝えるものとして、現代まで続いている。競馬香の見本となったように、二騎による勝負で、馬場末の標木(しるしぎ)に到達する遅速により、勝負を決める。これとは別に、十列(とおつら)と称する勝負がある。→十列(とおつら)
(2)現在行なわれている競馬は西洋式であり、文久元年(一八六一)横浜の洲干弁天社の西側の馬場で外国人有志により初めて行なわれたとされる。

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世界大百科事典内の競馬の言及

【ウマ(馬)】より

…能力として問題となるのは役用能力,繁殖能力などであるが,役用能力,とくに輓曳能力については種々の能力検定が行われている。競走馬については競馬というきびしい能力検定の場があって,競馬場でよい成績をあげたものが種馬として高い評価を受ける。選抜された種畜を血縁関係の近いものどうし交配して,その保持している遺伝的な形質を固定するのが内交配である。…

【競馬】より

…定められた条件のもとで2頭以上の馬を走らせ,その勝負を競う。
【歴史】

[西洋]
 現代の競馬は騎馬による戦闘,戦車競走,狩猟などにその起源をもつといわれる。古くはホメロスの《イーリアス》の中にうたわれた戦車競馬にまでさかのぼることができるが,近代競馬の形態が整えられたのはイギリスにおいてである。…

【端午】より

…また,奇(くす)しく霊なる意味から薬の玉を室内に飾り,身につけ,邪気をはらう意があった薬玉(くすだま)は,寿命を延べることから続命縷(しよくめいる)と称し,五色の糸で作り季節の花を,それにつけて贈答する風もあった。平安時代には,天皇が武徳殿に出席して騎射(うまゆみ)と競馬が5日,6日の2日間にわたって行われ,のち宴が催された。武家時代には,印地打(いんじうち)(印地。…

【賀茂競馬】より

…京都市北区上賀茂鎮座の賀茂別雷(わけいかずち)神社で行われる5月5日の競馬神事。〈かものくらべうま〉ともいう。…

【ダービー】より

…競馬の競走名。近代競馬発祥の地イギリスのエプソムEpsom競馬場(ロンドン郊外)で1780年に始まったもので,創設者の第12代ダービー卿スタンリーEdward Smith Stanleyの名をとって命名された。…

【ドロー】より

…スポーツ用語としてのドローの始まりは競馬である。意味は,競走馬を競馬場から引き上げさせて勝負の決着をつけない,つまり,〈無勝負〉ということにある。…

【ナーダム】より

…モンゴルの革命記念日7月11日にウランバートルで行われるもの(国家ナーダム)が最も大きく有名だが,同時にアイマク(州)やソム(県),協同組合その他でも行われる。民族スポーツとは〈男の三競技〉といわれる競馬,弓射,角力(相撲)をさす。競馬は種馬,7歳馬,5歳馬,4歳馬,3歳馬,2歳馬がおのおの28,30,28,25,20,15kmを別々に走り,おのおの先着の5馬をアイルギン・タブ(馬乳酒の5頭)とよんでたたえる。…

※「競馬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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