家庭医学館 「放射線角化症」の解説
ほうしゃせんかくかしょう【放射線角化症 Radiation Keratosis】
短期間に大量の放射線を浴びますと急性放射線皮膚炎をおこしますが、それが治った後におこる病変です。また、少量の放射線でも長期間にわたって浴び続けると皮膚が薄くなり、血管が浮いてみえ、色の白いところと黒いところがまざり合うようになります。これは慢性放射線皮膚炎の症状ですが、この皮膚炎の患部にできるいぼが放射線角化症です。
このいぼは、たくさんできがちで、白っぽいもの、紅褐色のもの、黒褐色のものがあります。がんになる傾向が強く、しかも転移しやすい特徴があります。原因は放射線の被曝(ひばく)です。
[検査と診断]
医療上あるいは職業上、過去に放射線照射を受けた人、あるいは現在も受け続けている人で、慢性放射線皮膚炎があり、その患部にできたいぼであれば予測がつきます。切り取った組織を病理検査して診断を確定します。
[治療]
患部を完全に切り取る切除手術を行ないます。たくさんできているときは一括して切除し、傷跡は植皮して治します。
その他の治療法として、抗がん剤のフルオロウラシル軟膏(なんこう)を塗る方法、液体窒素(えきたいちっそ)を用いる方法(冷凍外科的療法)などがありますが、完全な治療法とはいえず、再発を注意深く見守る必要があります。
[日常生活の注意]
慢性放射線皮膚炎のある人は、ときどき炎症部にいぼができていないかどうか確かめなければなりません。
職業上、放射線を取り扱う人は、予防上、放射線被曝を最小限にするため、細心の注意をしなければなりません。