政教分離訴訟(読み)せいきょうぶんりそしょう

知恵蔵 「政教分離訴訟」の解説

政教分離訴訟

国や地方自治体等の活動や財政支出などが、憲法20条・89条の定める政教分離に反するか否かが争われる訴訟。市体育館の建設に際して行われた地鎮祭が争点となった津地鎮祭訴訟において、最高裁は、憲法の禁止する国の宗教活動は、「行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫干渉等になるような行為」であるとし(目的・効果基準)、目的の世俗性などを理由として、地鎮祭は宗教的活動に当たらないとした(1977年7月)。県による靖国神社護国神社に対する玉串料の支出等が争われた愛媛玉串料訴訟において、最高裁は、例大祭等は靖国神社の重要な祭祀であり、玉串料の奉納は社会的儀礼とはいえず、一般人に対して県が特定の宗教団体を特別に支援しているとの印象を与えること、靖国神社は宗教上の組織・団体に当たることは明らかであり、本件支出は社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるかかわり合いであるとして、違憲判決を下した(97年4月)。2001年の小泉首相による靖国神社参拝をめぐっては6地裁に訴訟が提起され、04年4月の福岡地裁判決や05年9月の大阪高裁判決が違憲判断を行ったが、06年6月、最高裁は、人が神社に参拝する行為自体は、他人の信仰生活等を圧迫・干渉するものではなく、これに不快感を抱いたとしても損害賠償請求対象とならないとし、憲法判断をすることなく請求を棄却した。

(土井真一 京都大学大学院教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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